◆第105回 天皇杯▽準決勝 神戸2―0広島(16日・パナスタ)

 天皇杯連覇を目指す神戸が、広島に勝利し決勝進出を決めた。DF酒井高徳は右サイドバックとして後半25分まで出場し、無失点勝利に貢献した。

 試合開始から中盤でのボールの奪い合いなど両チーム激しくぶつかり合った。広島は前半、左ウィングバックのMF東俊希がクロスを上げる形から何度もチャンスを狙った。実際に上げきったシーンもあったが、同じサイドで対応する酒井が自由にさせず。右のセンターバックを務めるDF山川哲史、MF井手口陽介らと関わりながら守り続けた。

 1点リードの後半7分には、カウンターで2人対3人の状況をつくられた。広島はFW木下康介がボールを運びながら、MF中村草太が右に走り込んでいる状況。酒井は「最初は内側を絞っておきながら、自分だったらここで出すだろうなというタイミングで外に対応しにいって。案の定そのタイミングでボールが来た」と中村にボールが渡った際に素早く寄せにいき、思うようにボールを運ばせなかった。「少し僕がイメージより並走しているくらいにいたと思う」と酒井が話すように、中村はドリブルをストップ。すると、「ボールが少し体から離れたのが見えたので、アタックしないで遅らせることもできたのですが、この状況なら勝てると自信があった。しっかり取り切ることができて良かった」と、数的不利のカウンターを止めてなおかつ奪い取り、直後のチャンスにつなげた。百戦錬磨、というプレーが多かった中でもひときわ存在感が目立った場面だった。

 負傷離脱から復帰後初スタメンだった。不在時は、同ポジションで新潟の下部組織出身の後輩でもあるDF飯野七聖が出場。9日のG大阪戦(1△1、パナスタ)をはじめ、持ち味の快足に熱い気持ちが乗ったハイパフォーマンスで貢献していた。酒井は「自分が戻ってきてありがたいことに先発に選んでもらっている限り、彼が結果を残していた部分も背負って出なきゃいけないと思っている。どの選手に対してもですけど、生半可な気持ちで出るのは失礼に値する。やっぱり自分だよなと思わせるプレーをしない限りは、出る資格はないと思って臨んだ」と、試合前の心境を振り返る。いつもに増して魂を感じるほど、会話と鼓舞をし続け、声を張り上げ、戦い続けた。

 「自分は上手なプレー、特別なプレーをしてチームを助けるより、周りを引っ張る、ひきつけるというか、勢いをつけるような気持ちの部分だったりでチームを変えられるところはあると思っていた。リーグ戦も(優勝が)なくなって、チームとして結果も出ない状況の時にもう一つギアが欲しいというのは今このタイミングで自分にしか出せないのかなと。結果的に後ろも0で終われましたし、2点取れてチームとして決勝に進めて非常に良かった」

 何より勝ちきった結果にうなずいた。天皇杯連覇まであと1勝。この1週間も競争を繰り返し、全員で頂に向かう。

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