大相撲 ▽九州場所10日目(18日・福岡国際センター)

 東前頭5枚目・義ノ富士が初金星を獲得した。全勝だった横綱・大の里を押し出し、7勝目を挙げた。

初土俵から10場所目での金星は、年6場所制となった1958年以降で出島(元大関)に並ぶ史上5番目のスピード記録。関脇・安青錦は東前頭4枚目・玉鷲を寄り切って1敗を守り、トップに並んだ。1敗の大の里、安青錦を横綱・豊昇龍が1差で追い、3敗は義ノ富士、時疾風、錦富士の平幕3人となった。

 義ノ富士は腹を決めていた。立ち合いで鋭い出足から思い切り当たり、右が入った。すかさず左も差して大の里を引かせると、一気に走った。横綱をわずか2秒2で土俵外に押し出し、初土俵から10場所目。史上5位のスピードで初金星を獲得した。「やったぞという感じ。自分の相撲が取れて、結果が金星になって良かった。歓声がすごかった」と余韻に浸った。

 日大出身の元学生横綱は、日体大出身の大の里と大学時代に何度か対戦していた。

「全然負け越している。(大の里は)1学年上だったけど、入った頃にはかなり上の存在だった」。2年時の全国学生選手権準々決勝では勝利しているが、大相撲では初顔合わせ。「昔の印象は捨てて挑んだ」と明かした。

 朝稽古では師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱・照ノ富士)に「どうやっていくんだ」と聞かれ、「もろ差しで走ります」と答えた。そこまでの過程を話し合い、イメージは合致した。「やってやるという気持ちだった。負けたらどうしようという気持ちをなくした」と闘志を燃やし、作戦を完遂。八角理事長(元横綱・北勝海)も「勝因は立ち合い。義ノ富士は思い切りがある」と称賛した。

 新入幕から3場所目でしこ名を本名の草野から義ノ富士に改めた。熊本県出身でご当所場所でもあり、新たなしこ名のタオルが序盤戦で一時売り切れるなど注目度もうなぎ登りだ。

「まだ場所がある。明日も自分の相撲を取って勝ちたい」。白星を積み重ね、「義ノ富士」のしこ名の価値を高めていく。(林 直史)

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