大相撲九州場所11日目(19日・福岡国際センター)

 首位で並ぶ横綱・大の里が、昇進3場所目で初めての連敗で2敗となり、優勝争いが混戦となった。すでに負け越しが決まっている小結・隆の勝に、わずか1秒8で引き落とされた。

前日に初金星の東前頭5枚目・義ノ富士は、1敗の関脇・安青錦を突き出して勝ち越した。横綱・豊昇龍は関脇・王鵬に完勝して2敗をキープ。トップで2敗の大の里、豊昇龍、安青錦を1差で義ノ富士、錦富士、時疾風の平幕勢が追う白熱の展開となった。

 * * *

 電柱が倒れるようだった。隆の勝が右のど輪を外した時に、大の里の左足が流れたように見えた。そのタイミングで、地団駄(じだんだ)を踏んだような状態で腹から土俵に落ちた。負ける相手ではなかった。10日目に義ノ富士に負けて気負いがあったのかもしれない。15日間の長い戦いの中では、こういう負けもある。

 大の里の2敗目は舞台を独走から混沌(こんとん)へと変えた。0点の相撲を取った大の里と同じ若手に完敗した安青錦に代わって浮上してきたのが、立ち合いからの鋭い踏み込みで王鵬を圧倒した豊昇龍だ。

 印象的だったのは今場所9日目だった。

横綱がプライドを捨て、大銀杏(おおいちょう)もまだ結えない相手・義ノ富士に頭から当たった。この気迫に私は開き直った強さを感じた。大相撲の世界では、あと4日は、されど4日と言われている。何が起こるか分からないのだが、豊昇龍の鬼の表情がなぜか不気味に映る。(元大関・琴風、スポーツ報知評論家)

編集部おすすめ