日本代表は森保一監督(57)が、100試合目の指揮となったボリビア戦(18日・国立)に3―0と勝利し、年内ラスト実戦を白星で締めくくった。優勝を目指す2026年北中米W杯に向けた成長と挑戦の1年となった25年は、10月に史上初めてブラジル代表に勝利(3〇2)するなど、8勝3分け2敗で終えた。

そんな25年を、元日本代表MF中村憲剛氏(45)が総括。森保ジャパンの進化、そしてW杯に向けた課題についても言及した。(取材・構成=内田 知宏、金川 誉)

  * * *

 日本のW杯での戦い方が、より輪郭を帯びて見えてきた1年だった。チームコンセプトの「良い守備から良い攻撃」が徹底されている今、ボリビア戦でも見せたように、相手陣内でハイプレスをかけ後ろが連動する形はチームに浸透しており、試合中盤にその足が鈍ってきたら、ブラジル戦のように選手交代でギアを上げる形もかなり出来上がってきた印象ではある。その中で、選手層は厚みを増しており、DFなら鈴木淳之介や渡辺剛、ボランチなら佐野海舟らが頭角を現した。けがで三笘薫や守田英正(9、10、11月と招集外)、遠藤航や板倉滉(10月は招集外)ら主力が離脱した中で、出てきた選手がチャンスをつかんだ。26人全員で戦えるチームになりつつある。

 その中でも、この1年で急成長したのは鈴木淳之介。すごいな、と。まるで代表に長くいるような存在感を示し、違和感なくフィットした点は素晴らしい。また佐野も欠かせない選手になり、鎌田大地のボランチ(定着)は、今年のトピックの一つに。1年前は、守田、遠藤で鉄板だったボランチのペアに、田中碧も含めて激しい競争が生まれた。

そして(アキレスけん断裂から)帰ってきた谷口彰悟。3バックの中央で気配り、緻密(ちみつ)さを求められる中で、彼への信頼がぐっと上がった10、11月だったと思う。

 日本の選手たちは確実に成長しているが、W杯優勝候補の国の選手たちも成長しており、追いつき追い越すのは簡単ではない。その相手に勝つためには、フランスやアルゼンチンの運動量が1試合で1だとしたら、日本は2、3とみんなで走って対応する形が求められる。3バックでの戦いでは特に求められるだろう。その基準を、覚悟を南野や堂安、久保といったこのチームで長くプレーしている軸の選手たちが率先して示している点はとても大きい。全員で戦う意識、誰も安泰ではない緊張感が、優勝を目指すチームの空気感を作り上げている。

 ただ、懸念点もある。3バックシステムという、選手たちの役割も個々の特徴が出しやすいような形に整理され、チーム力が上がっている分、相手は対策は立てやすいかもしれない。日本は序盤からかなりハイプレスをかけてくる、と相手は読みやすい。相手によっては長いボールで日本最終ラインを躊躇(ちゅうちょ)なく攻撃する国も出てくるだろう。また、22年カタールW杯のように、強豪国を相手にローブロックで守れることは証明しているが、課題はミドルブロックでの守備か。

ローブロックとハイプレスの中間地点であるミドルブロックの守備をしっかりと形作るのは容易なことではない。強豪と戦う時には、ハイプレスがかからず、自陣での守備を強いられる試合もある。その時は戦術カタール(ローブロックからのカウンター狙い)で行くのか、それとも「カタール・改」と言えるような形を見いだすのか。幅のある戦いができるだけのメンバー拡充は確実にされているだけに、期待感はある。(元日本代表、川崎MF・中村憲剛)

編集部おすすめ