柔道の男子73キロ級で昨夏パリ五輪銅メダルの橋本壮市(パーク24)が20日、都内で引退会見に臨んだ。13日に自身のSNSで現役引退を発表していたが、この日改めて「とうとう引退するときが来たな、という感覚です」と語った。

 すっきりとした表情で、会見に臨んだ橋本。冒頭に「これまで私を支えてくださった皆様に、心より感謝を申し上げたい」と、頭を下げた。昨夏パリ五輪は、32歳で初出場して銅メダル。日本柔道史上最年長の表彰台だった。「やっぱり、柔道家が目指す場所だな、と。やっとたどり着いたな、という感覚でした」。その中で、柔道人生の思い出は、その五輪に臨む直前の1シーンだったという。「初戦で緊張していて。入場で緊張して、試合ができる状況ではなかったけど、声援の中で娘の『パパー』という声が入ってきて。オヤジパワーというか。最後は開き直って、畳の上に立つことができた。その五輪の経験は、一番の思い出」としみじみ振り返った。

 同学年には16年リオ、21年東京五輪を連覇した大野将平の壁。橋本は「彼を超えていかないと、五輪にはたどり着かない。大野選手の存在は、自分を成長させてくれた。感謝しています」と思いを込めた。2023年頃から引退が頭をよぎる中、夢舞台にたどり着き「年齢的にも最後だな、と思って五輪には臨みました」。今年の夏頃に、家族やパーク24の海老沼聖・男子監督らに相談し、最後は決断したという。

 夢の五輪王者には届かず。それでも「全てを、全身全霊をかけたのが五輪だったので。未練はない」とキッパリ。終始笑顔で会見に臨んだが、パーク24の後輩への思いを語る際は言葉につまり、目元を拭った。今後は、所属のアドバイザーとして関わり「明日も(柔道着を)着たいと思います」と橋本。指導者の勉強のため、海外へ行くことも視野にいれているという。

6歳で始め、34歳で終えた柔道人生。「いろんな方に恵まれて、強さだけを求め続けた柔道人生でした」と、28年間を爽やかに終えた。

 ◆橋本 壮市(はしもと・そういち)1991年8月24日、静岡県浜松市生まれ。34歳。両親の影響から6歳で柔道を始める。神奈川・東海大相模、東海大を経てパーク24所属。73キロ級で世界選手権は17年金、18、22年銀、21、23年銅と出場5大会全てでメダルを獲得。昨夏パリ五輪では銅メダル。32歳11か月5日でのメダル獲得は、2008年北京五輪銅の谷亮子を3日上回り、日本柔道最年長記録。得意技は袖釣り込み腰。170センチ。

編集部おすすめ