21日の金曜ロードショー(後9時)は、同日にいよいよ公開される「果てしなきスカーレット」を記念した細田守監督特集の第3弾として、一つ前の作品である「竜とそばかすの姫」(2021年)が、枠を35分拡大して放送。金ローへは22年7月以来、3年4か月ぶりの登場となる。

 高知県の田舎町に父と2人で住む女子高生・すずは、幼い頃に母親を事故で亡くし、それがきっかけで歌うことができなくなっていた。ある日、すずは友人からインターネットの仮想世界「U」を教えられる。世界で50億人が参加する「U」の中では歌えることが分かったすずは、「As(アズ)」と呼ばれる自らの分身であるアバターのベルが大きな注目を集めることに戸惑いを覚え始めた。

 そんなある日、コンサートを行おうとしていたベルの前に「竜」と呼ばれる謎の存在が現れる。その振る舞いから他のAsたちに忌み嫌われる竜だったが、ベルはなぜか彼を無視することができなかった。やがて、竜を「U」の中から追放しようとする動きが起こる中で、ベル=すずは彼を助けることを決める―。

 あらすじからも、本作は細田監督の出世作として知られる「サマーウォーズ」(09年)の”上位互換版”とも言える。前回放送された際にこのコラムでは、本作がそれまでのビスタサイズ(スクリーン比が1・85:1)からシネマスコープ(シネスコ、2・35:1)で作られたことで、仮想世界のビジュアル面において、さらなる奥行きが生まれたことを紹介した。その時から3年あまり、改めて見るとストーリーとしての「奥行き」がより感じられるような気がした。

 本作の中では「『U』の中では、誰でも自由」という表現がある。だからこそ、すずはベルとして他人の目を気にすることなく歌を歌うことができたわけだが、それが物語が進んでいくに従って「誰だか分からないことによる問題」が発生し、Asの匿名性がストーリーのカギとなってくる。

 公開当時も何となく「ある意味、ネットの世界って怖いよね」と思ってはいた。

当時も「ネット上であれば、何を言ってもいい」といった風潮があったかもしれないが、最近のニュースなどを見れば分かるようにSNSの発達によって現在はそれが”日常”になりつつあり、痛ましい事件も起きている。本作はエンターテインメント作品なので、その問題を社会的にえぐるという描き方ではないが、改めて恐怖と同時に細田監督の先見性を感じ取れるのではないだろうか。(高柳 哲人)

編集部おすすめ