ソフトボール女子日本代表で五輪3大会メダルの上野由岐子投手(ビックカメラ高崎)が22日から2日間で群馬・高崎市のグラウンドで「ウエノラボ2025 supported by ミズノ」を開講中だ。自らが発案し、次世代を担う中学から大学生の計10投手に経験や技術を直接指導するソフトボールクリニックで、初日は中高生と高・大学生に分けた2部構成で約6時間みっちり指導した。

 25年目のシーズンを終えて約1週間。上野の姿は球場にあった。中高生の1部は午前9時開講。6人の受講生が上野から教わりたいことを伝え、投球練習をスタート。しかし上野はアップで止めた。「私はアップで肩を温めるだけでなく、今日の指先の感覚や状態を感じながら投げる。アップから他の投手が意識していないプラスアルファのことをしていくのが大事」と力説。上達への近道は、アップから感覚を研ぎ澄ませる必要性があるのだ。すると、緊張していた受講生の目に闘志が宿った。

 約2時間半で100~150球をメドに投げ込んだ。その中で上野はデモンストレーションを通して上下、左右の変化球も伝授。握りから球を動かすコツまで惜しみなく伝えた。

上野の意識は「直球と同じフォームで投げることも大事だが、ボールを動かすという意識の方が数倍大事。同じフォームで投げる(意図)は(変化球は)手に意識が行き過ぎて足がサボるから。できるだけ同じフォームのイメージは持った方がいい」。

 中学2年生の13歳ながらストレート、チェンジアップ、課題のスライダーなど8種の変化球を特訓中の若菜星羅さんは「手首の角度や足の向きや体の開き具合まで教えていただいて、レベルアップにつながった」ときっかけをつかんだ様子だった。また、上野は講義を2日連続で行う意図として「ソフトボールは試合は2日以上で大会が行われる。さらに2日目の方が(決勝など)大事な試合が多いので、連投をイメージしている」と説明。疲労感が残る中でどれだけ投げられるかが鍵になる。「普段はこんなに投げていない」という若菜さんも「明日も頑張らなきゃ」と意欲を燃やした。

 ウエノラボは21年12月に第1回を開講し、4回目。「将来ソフトボール界を代表する投手になりたいと強い意志がある選手」を募集し、上野自らが投球と意気込みを撮った動画を確認し選考する。「限られた人数の中で、高いレベルの経験、スキルを伝えていきたい」と人数を絞り、あえて一人1万円の講習料を受け取っている。昨年は米国、今年も鹿児島、富山の遠方から参加した投手もいた。

長年、世界のトップで活躍してきた上野は「自分にしか教えられないものを、より高いレベルで教えていく場にしたい」と話している。

 第1回の受講生からは現在ニトリJDリーグで共に戦う坪野三咲投手(デンソー)を輩出してきた。上野は「ソフトボールは日本代表も含めて、ずっと投手不足だと言われてきたけど、今日も見ていい選手がいっぱいいると感じた。将来的にすごい楽しみ」とうなずいた。そして「いつかオリンピック選手がここから出てくれたら、うれしいね」と夢を描いた。23日は講習第2日。レジェンドの熱血指導は続く。

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