天心の初戴冠か、拓真の復活か―プロボクシングWBC世界バンタム級(53・5キロ以下)王座決定戦12回戦は24日、トヨタアリーナ東京でゴングを迎える。WBC世界バンタム級1位・那須川天心(27)=帝拳=と、WBC世界同級2位・井上拓真(29)=大橋が激突する2025年屈指の好ファイト。

本紙評論家でWBC世界同級王座を12度防衛した山中慎介氏(43)が試合をずばり占った。

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 両選手を各項目ごとに比較して総合的に判断すると、実力はほぼ互角だ。それ故に、ジャッジ泣かせの試合になるだろう。両者ともにディフェンス技術は高く、パンチをまともに受けない。クリーンヒットの数で優劣を決めるジャッジには、ラウンドごとに頭を悩ます試合になるはずだ。

 WBCの世界戦は4回と8回終了後に公開採点がある。前半ポイントを奪いリードできればペースを握れるが、負けている方は挽回するために戦い方を変えざるを得ない。いかに序盤を自分のペースで戦いポイントを奪っていくかが、勝利への近道となる。

 序盤はお互い相手の動きを見ながらの探り合いだろう。2人の戦う距離を比べても、天心の方が遠い位置から相手にパンチを出す。拓真は天心と同じサウスポースタイルのアンカハス(2024年2月、9回KO勝ち)を全く苦手とせずに完璧に仕留めた。ただ、天心はアンカハスよりスピードがあり、より変則。

立ち上がりは天心がポイントを取る展開を予想する。拓真もそこは計算済みで中盤以降の勝負と考えているはずだ。

 天心は常に動きながら、前の手となる右ジャブ、オーソドックスの拓真は距離を詰めてからの右ストレートが、それぞれカギと読む。拓真は前回の堤戦(24年10月、判定負け)で下がってしまうメンタル的な弱さを露呈したが、今回はないはずだ。表情からもこの一戦にかける覚悟が伝わってくるからだ。日本人同士の世界戦は過去の例から最後までもつれる。勝敗を行方を大きく左右するのは気持ちの勝負となるラスト4ラウンドの攻防だ。高い技術を持った者同士の激突―。激闘の末に、天心が小差の判定でベルトを手にするだろう。(元WBC世界バンタム級王者)

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