歌舞伎俳優の尾上松緑がこのほど、都内でスポーツ報知などの取材に応じ、歌舞伎座「十二月大歌舞伎」(12月4~26日)第2部「丸橋忠弥」について語った。

 由井正雪が中心となり江戸幕府転覆を計画した「慶安の変」で、幕府の要人を討ち取る役目を担った丸橋忠弥の物語。

忠弥を演じる松緑は以前から「物語に矛盾がある」と思っていたという。「頭が切れる男として描かれているところがあれば、三枚目どころか大バカ者になってしまうところもある」と思い、竹芝潤一氏に補綴、西森英行氏に演出を依頼。今回は「切れ者としてキャラクターを統一させようと思います」と明かした。

 2幕目の忠弥が大勢の捕り手を相手に、戸板や縄を用いる立ち回りが見どころだ。「『蘭平物狂』に匹敵する立ち回りがある。これまでは立ち回りに重きを置くことで、その前の物語が雑だった。だから、できるだけ矛盾を刈り込んで、伏線をつなげていきたい」。さらに「飲んでも飲んでも酔わない人なのに、家で飲むと酔うの矛盾している」と気付き、「酔ったふりをしているが、忠弥自身は平常心」という演出に変更した。

 「丸橋忠弥」の魅力は「何が好きかというと、男っぽさが好き」と説明。「僕自身、ピカレスク物が好きなんです。丸橋忠弥が良いやつか悪いやつかと言われたら悪者だと思う。ただ、彼自身の正義はある。

アンチヒーローが表立って活躍するストーリーがいいですよね。世話物でありながら、堀の深さを測る見得とか、男っぽさがある」と力を込めた。(有野 博幸)

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