東宝は25日、映画「国宝」(李相日監督)の興行収入が173億7739万4500円を記録し「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(本広克行監督、2003年)の173・5億円を超えて、実写邦画歴代1位を22年ぶりに更新したと発表した。

 * * * *

 日頃から映画と歌舞伎の両方を取材しているので、吉沢と横浜による女形の芸に注目して「国宝」を観賞した。

歌舞伎の場面も違和感を覚えることはなく、劇中の演目と登場人物の人生が巧みにリンクして、胸に響いた。

 俳優たちの演技、歌舞伎を間近で見ているような臨場感と映像美、心を揺さぶる人間ドラマがどれも一級品だった。名実共に日本を代表する俳優とスタッフが潜在能力を存分に発揮して作品に昇華させた成果だろう。ではなぜ、発揮できたのか。それは芸に生涯をささげる覚悟を持った歌舞伎俳優に対するリスペクトが共通認識として徹底され、精神的支柱になったからだと思う。

 原作者の吉田氏は3年間、黒衣(くろご)として劇場に潜入。見聞きした歌舞伎俳優の覚悟を作品に刻み込んだ。その思いを李監督が受け継ぎ、中村鴈治郎、中村壱太郎のサポートを受けてスタッフ、キャストに浸透させた。吉沢と横浜が撮影で挫折しそうになった時にも、それが心の支えとなり、快挙達成に結実した。(有野 博幸)

編集部おすすめ