歌舞伎俳優の松本幸四郎中村隼人が26日、都内で来年1月の歌舞伎座公演「壽 初春大歌舞伎」(1月2~25日)夜の部「女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)」の取材会に出席した。

 感情のままに生きる油屋「河内屋」の道楽息子・与兵衛の人間らしい弱さを生々しく描き、衝撃的な殺しの場さえも美しく見せる近松門左衛門の名作。

与兵衛役はダブルキャストで幸四郎は2018年以来、8年ぶり6度目、隼人は初役だった24年以来、2年ぶり2度目となる。世話焼きな近所の油屋「豊嶋屋」の女房お吉を坂東新悟、中村米吉がダブルキャストで勤める。

 2人とも愛着のある演目で、幸四郎は「とても大好きで思い入れのある作品です。今回も新たな発見をして、挑めればと思います」と意欲的。11年に幸四郎が東京・ル テアトル銀座で勤めた与兵衛を見て「憧れていた」という隼人は「幸四郎のお兄さんとダブルキャスト。うれしい反面、不安もありますが、アドバイスをもらい、何か一つでも盗んで、1月に臨めたらと思います」と語った。

 与兵衛の人物像について、幸四郎は「何をやるにも100%、本能で生きる。遊ぶときも嘘つくときも本気」。隼人は「殺しの場では、獲物を狙う爬虫(はちゅう)類のようになって、快楽にふける。様式美として美しく殺しの場を見せたい。片岡仁左衛門のおじさまからは『お客様に嫌われてはいけない』と教わった。どこか憎めない、手を差しのべたくなる与兵衛でありたい」と力を込めた。

 「鬼平」こと、長谷川平蔵を演じている共通点のある2人。隼人にとって、幸四郎は憧れの存在だ。「幸四郎さんはチャーミング。ずっと少年の心を持っている。心が年々若返っている。できない役という制限を設けていない。荒事でも、二枚目でも、何でもやる。ピーターパンのような童心を見習いたい」。これに対し、幸四郎は「役者のニンは、見ている人が決めること。自分としては、どんな役も魅力を感じる」と思いを明かした。

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