歌舞伎俳優の中村壱太郎と、尾上右近が11日、京都市内で「令和八年 三月花形歌舞伎 特別公演」の取材会に出席した。

 今回は、映画「国宝」でも名場面の1つとして演じられた「曽根崎心中物語」を、2人がお初、徳兵衛の役代わりで演じるのが見どころのひとつ。

壱太郎は「ダブルキャストは三月花形歌舞伎でこれまでもやってまいりましたが、まさか徳兵衛をやるという目線では、今まであまり曽根崎心中を見ていませんでしたので、とても自分の中では新鮮な思いでおります」と笑顔。成駒家が代々務めてきたお初を、右近が初めて演じることについては「やはり1つの歌舞伎の演目である以上、いろんな方ができる形であると思うし、やってはいけないという決まりはないので、そういう思いで今回、僕も新たにお初、徳兵衛というものを見つめ直していきたい」と述べた。

 映画で歌舞伎に興味をもった人が、歌舞伎に初めて触れるチャンスともなる。右近は「本場でもあり本物でもある歌舞伎俳優がやる歌舞伎の公演。それが本質的にきちんとお見せするというスタンスは絶対に重要だと思います。でも、お客様の空気を読んだり、ニーズに合わせて舞台を届けるのは当たり前のこと」とキッパリ。壱太郎も「ちょっと歌舞伎を見に行ってみようと言った人が、最初に見た歌舞伎がつまらなかったり、長いと感じたりしたら、もうその人は絶対来ない。テンポ感は大事」と、コンパクトでありながら、歌舞伎ならではの美しさを見せる令和ならではの作品をアピールした。

 昨年、大阪松竹座で同演目で共演。右近はラストの花道に出て行く前に神々しいお初を演じる壱太郎を見たことを明かし「お初を今度自分もやらせてもらって、そういうふうに壱太郎さん演じる徳兵衛に感じてもらえたらうれしいし、そういう心のバトンのリレーがずっと行われていく。一つの循環の中に自分が身を置いていけたらうれしいです」と意欲を語った。

 公演は京都・南座で来年3月3日から25日まで上演される。

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