ジャーナリストの伊藤詩織氏(36)が12日に都内で、自身が監督したドキュメンタリー映画「ブラック・ボックス・ダイアリー」の初日舞台あいさつに出席。同映画を巡るトラブルについて「ご迷惑ご心配をおかけしました」とした一方で、映画の問題点を指摘した自身の元弁護団については「事実でないことは正していかなくてはいけない」と話し、反論文を自身のホームページに掲載したことを明かした。

 同映画は伊藤氏が受けた性被害を自ら調査し、告発する過程を記録したドキュメンタリー。昨年以降、当時の代理人弁護士らが、現場となったホテルの防犯カメラ映像や捜査員との会話の音声を承諾なく用いたとして、問題があると指摘してきた。伊藤氏の元代理人の西廣陽子弁護士は11日、「残念ながら、法的な問題としては解決していません」との見解を示すコメントを公表。全く修正されていない映画が海外で既に販売されている点なども指摘しており、映画について「『公益性』はないと考えている」「重大な人権上の問題をはらんでいると言わざるを得ません」と主張した。伊藤氏によると、指摘を受けた点を中心に修正した新バージョンを「日本公開版」として上映したという。

 この日壇上に立った伊藤氏は、緊張した面持ちで「日本へのラブレターと思って、10年間かけて作ってまいりました」と観衆に話しかけ「この問題について私が向き合いたい日本という場所で公開するのは、意味があること。きょうまでこの映画が本当に上映できるのかという恐怖がありました」と心境を明かした。

 映画を巡るトラブルについては「私も、とても反省する面もありました」と自身の不備を認め「本当にご迷惑ご心配おかけしました」と頭を下げた。一方で、「お世話になり尊敬している西廣弁護士、元弁護団からもいろいろなご意見があって。事実と違うことが報道されてしまったり、一方的な情報が回ってしまったことに対しては、私としては正面から対立する形でお話はしたくないと避けてきた」とほとんど公の場で説明しなかった理由に言及。「ですが、やはり事実でないことは正していかなくてはと思いました。昨日西廣弁護士がステートメント(意見書)をリリースされたんですけど、事実でないことに対して私もステートメントを書きました。

ホームページに載せましたので、参照にしていただければと思います」と反論文を掲載したことを明かした。

 伊藤氏は実際に自身のホームページに「西廣陽子弁護士のステートメントについての伊藤詩織の見解」とのタイトルで文章を掲載。使用不許可だったホテルの防犯映像については「本件映画ではホテルから提供された映像(オリジナル版)ではなく、CGによって制作された再構成映像を使いました」と主張。同映画に公益性はないとの評価については「性暴力事件の可視化は、次の被害を防ぐための社会的議論を促すもの」と反論した。

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