◇ラグビー リーグワン第1節 埼玉―BL東京(14日、味の素スタジアム)

 リーグワン2025―26シーズンが開幕し、4季ぶりの優勝を目指す埼玉は、2連覇王者のBL東京を46―0で破った。チャンピオンチームを完封する絶好のスタートに、プロップ稲垣啓太は「今日の結果はよかったが、我々がボコボコにされた試合もある。

まぁ、今日みたいな試合もあるかな、と」と冷静に語った。

 前半7分、SO山沢拓也がPGを決めて3―0と先制すると、フッカー坂手淳史(同14分)、FBパートン(同27分)らがトライを重ねる。ボール争奪戦で優位に立ち、反則を誘っては山沢のキックで3点を加点。守っても39―0の後半20分、トライラインを5メートル後ろに背負いながらの守りでターンオーバー。33分、34分と自陣での守りでボールを奪い返し、最後まで相手のスコアボードに0を刻んだ。

 何よりの強みとする堅守。主将の坂手は「選手たちがつくってきた伝統」と言った。4位に終わった昨季は安易に崩され、後手に回っての失点も目立った。今年8月、35歳の稲垣は、プレッシャー下でのボール争奪戦を課題とし、指摘していた。「チームの弱さ。いい時は一見、いいように見せて『これがワイルドナイツ』のような雰囲気を出すけど、実際はなんてことはない。なんとかなる、という考えがまん延して、今のチームを作っているので」。

開幕に向け、精神面の成熟を一つのカギとしていた。

 この日、稲垣が「一番顕著に表れた」と振り返ったのが、11月22日の愛知との強化試合。主力級が揃った中、2部チーム相手に26―33で敗れた。稲垣の言葉を借りれば「なんとなく」グラウンドに立ったという一戦。トップチームとして、個々の能力の高さは認めながら「本当の真剣勝負になった時に、なんとなく(試合に)入ったら、絶対やられる」とし「根性論を提唱したいわけではないけど、大前提として、土台を持っていないのにグラウンドに立つな、ということ」と説いた。

 敗戦後、チームでのミーティング。今季から新たに指揮を執る金沢篤ヘッドコーチや、選手らが「強いメッセージを発信していた」という。WTB竹山晃暉も「言い方的には、すごくきつかった」と振り返る時間。精神的な準備の面でそれぞれが自覚を改め、強化試合最終戦の東京SG戦は27―17で勝利。稲垣は「そういったことがあって、今日いいスタートが切れた。そういった経験もチームにとっては必要だったのかなと、プラスには捉えてます」とした。

 この日は心身万全の状態で、ほぼパーフェクトな試合運び。

「今日だけだったら、また元に戻る。これをやり続ける必要がある」と表情を変えない稲垣は、必要なことを問われると「気持ちです」と即答した。「なんとかなるだろうでは、どうにもならない時に立て直せない。ラグビーはやはり、まずはメンタル。準備してきたことを出すためには、マインドセットが一番大事」。取り戻しつつある“伝統”が、王座返り咲きを予感させる。

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