「第50回報知映画賞」の表彰式が15日、東京・渋谷区のセルリアンタワー東急ホテルで行われた。「ナイトフラワー」(内田英治監督)で自身初の主演女優賞に輝いた北川景子(39)は、ドラッグの売人になったシングルマザー役での新境地に感無量。

デビューから22年、女優として、母としてコツコツ歩んできた日々が報われ「私にとっての第2章、新しい扉が開かれた」と未来に踏み出す受賞となった。

 22年のキャリアで初の主演女優賞。「若い頃は『賞レースとは縁がない』って、初めから諦めていたところがあったんです。コツコツ頑張っていたら、いつか賞を頂ける日が来るよ、って言いたいです」。映画女優に憧れた少女は時を超えて、まばゆい光の中に立っていた。

 表彰式では黒のシックなドレス姿で登壇。名前がコールされると、そのオーラに円卓からどよめきの声が起こった。困窮し、ドラッグの売人になることを決意するシングルマザー役。自身も役柄と同じ姉弟の2児を育てるが、スピーチでは「命を削って大切な家族を守り抜くという役柄から、私もひとりの人間として、母親として非常に励みをもらった」と誠実に語った。

 受賞は家族も大喜びだったという。「両親にも夫(歌手のDAIGO、47)にも伝えましたし、娘もなんとなく、トロフィーというものがすばらしいものだって分かっているみたいで『トロフィーもらってきてね。頑張ってきてね』って言ってくれたことはすごくうれしかった」と目尻を下げた。

「みんなで食卓を囲むテーブルがあるんですけど、頂いたお花と一緒にブロンズ像を飾りたいです」

 前日の14日には、公開後初めて映画館に足を運び、ママ友たちと「ナイトフラワー」の世界に浸った。「森田(望智)さんの魂を削るような頑張りを改めて感じましたし、親子のシーンでは涙する声を聞きました。エンドロールで皆さんが席を立たなかった姿を見て、『届いたのかな』って」。役者冥利(みょうり)に尽きる瞬間だった。

 「内田監督から『芝居しようとしないで、役として自然にいてほしい』って言っていただけたことが目からウロコだった」という撮影の日々。「滑舌やセリフの抑揚、カメラの向きのようなお約束ごとに縛られず、心を突き動かされる芝居をしようと目が覚めた。私にとっての第2章、新しい扉が開かれたきっかけの作品になった」。内田監督や今作との出会いが、自らの景色を変えてくれた。

 初めての主演賞は、第1章のピリオドでもあり、第2章の幕開けでもある。「根気強く育ててくださった皆様に報告できてホッとしました。目の前にある脚本と向き合い、お芝居をするということは変わらない。それでも長くやり続けることで、粘って(賞を)頂けることがあるんだ、と少しでも若い世代の方への勇気になったら」。

積み重ねた北川の足跡が、50回の報知映画賞の歴史に確かに刻まれた。(宮路 美穂)

 〇…北川とフジテレビ系連続ドラマ「謎解きはディナーのあとで」(2011年)で共演し、親交のある椎名桔平(61)が花束ゲストとして駆けつけた。椎名は「この人は年を重ねて全く違う役で大きな花を咲かせる女優さんになるんじゃないかなって思っていた」と当時の印象を語り「俳優としての覚悟みたいなものを見せつけられた」と脱帽。北川も「新人の頃を知ってくださっている先輩からお花を頂けるなんて夢のよう」と感謝した。

 ◆北川 景子(きたがわ・けいこ)1986年8月22日、兵庫県出身。39歳。2003年に「ミスセブンティーン」に選ばれモデルデビュー。同年、ドラマ「美少女戦士セーラームーン」で女優デビュー。06年「間宮兄弟」で映画デビュー。07年にテレビ朝日系「モップガール」で連ドラ初主演。現在放送中のNHK連続テレビ小説「ばけばけ」に出演中。身長160センチ、血液型O。

 ◆報知映画賞ブロンズ像 イラストレーターの和田誠さん(19年死去、享年83)がデザインしたライオンの像。重さ4・4キロ。

 ◆選考委員 浅川貴道(読売新聞文化部映画担当)、荒木久文(映画評論家)、見城徹(株式会社幻冬舎代表取締役社長)、藤田晋(株式会社サイバーエージェント代表取締役会長)、松本志のぶ(フリーアナウンサー)、YOU(タレント)、LiLiCo(映画コメンテーター)、渡辺祥子(映画評論家)の各氏(五十音順)とスポーツ報知映画担当。

 〇…表彰に先立ち、主催者を代表して報知新聞社の長谷川剛代表取締役社長があいさつした。受賞作品全てを観賞した上で「全ての映画に携わる関係者の皆さんが作品に注いだ、情熱と探求心が形になって表れた」と感服。第50回の節目を迎えた報知映画賞のさらなる発展を願い、「映画ファンの開拓に、少しでも力をお貸しできればと思う」と話した。

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