「第50回報知映画賞」の表彰式が15日、東京・渋谷区のセルリアンタワー東急ホテルで行われた。「栄光のバックホーム」(秋山純監督)で新人賞に輝いた俳優・松谷鷹也(31)は、「本当に本当に皆さんに感謝しています」と感謝の言葉を口にした。

 涙がとめどなく頬を伝った。「第50回という記念すべき年に、新人賞をいただくことができて、本当にうれしく思っています」。松谷は右手で何度も涙を拭いながら、「本当に、本当に感謝しています」と繰り返した。

 元阪神タイガースの外野手で、2023年に脳腫瘍のため死去した横田慎太郎さん(享年28)の壮絶な人生を描いた作品。松谷は映画の企画がたち上がった4年半ほど前から交流を重ね、人生を演じ切った。

 撮影前から、秋山監督の下で5年ほどスタッフとして働いていた。昨年の報知映画賞表彰式では、特別賞を受賞した平泉成(81)付きのスタッフとして、会場の後方からきらびやかな舞台を見つめていた。「その日、裏で成さんが『来年は鷹也かな』と何度も言ってくれました。でも、本当に実現するとは思ってなかった」。1年後、スポットライトに照らされたことに「感慨深い」とかみ締めるように目を細めた。

 花束贈呈に駆けつけた秋山監督からは「僕のアシスタントを5年間もやってくれて本当にありがとう。今日でクビです。

もう振り返ることなく俳優として歩いていってほしい」と熱い言葉をかけられた。その言葉に「クビということはもう裏方にはなれない。逃げ道がなくなった。これからが本当のスタートラインになると思います」と覚悟を口にした。

 この日は、横田さんのグラブも会場に持ち込まれた。横田さんが阪神入団時の色紙に書いた「日々成長」という言葉を、自身も胸に刻む。「一日一日大切に生きて、また素敵な作品に出会えるように。背中で語れるような、熱い男になりたい」。俳優・松谷鷹也は今、輝かしい一歩を踏み出した。(瀬戸 花音)

 ◆松谷 鷹也(まつたに・たかや)1994年1月22日生まれ。神奈川県出身。31歳。

22年の映画「20歳のソウル」では裏方として弁当の手配やロケ車の運転などを担当。25年11月から芸能事務所アービングに所属。特技は睡眠学習、整理整頓。趣味は料理、筋トレ。父は元巨人投手で実業家の松谷竜二郎氏。身長185センチ。

 ◆選考委員 浅川貴道(読売新聞文化部映画担当)、荒木久文(映画評論家)、見城徹(株式会社幻冬舎代表取締役社長)、藤田晋(株式会社サイバーエージェント代表取締役会長)、松本志のぶ(フリーアナウンサー)、YOU(タレント)、LiLiCo(映画コメンテーター)、渡辺祥子(映画評論家)の各氏(五十音順)とスポーツ報知映画担当。

 〇…製作総指揮を務めた幻冬舎社長の見城徹氏も登壇。主演のキャスティング経緯について「1年3か月悩みに悩み、葛藤し、松谷鷹也に決めました」と明かし、「今は本当に松谷鷹也にして良かったなと思っています」とねぎらった。報知映画賞の選考委員を務めている見城氏は、同作がノミネートされた全部門の選考と投票を棄権している。

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