プロボクシング世界3階級制覇王者・中谷潤人(27)=M・T=がスーパーバンタム級初戦へ準備を整えた。27日、サウジアラビアでWBC同級10位セバスチャン・エルナンデス(25)=メキシコ=と対戦するビッグバン。

来年5月に期待される世界4団体同級統一王者・井上尚弥(32)=大橋=との東京ドーム決戦に向けても、ここは負けられない。「BIG BANG!」第9回は2025年を締めくくる一戦を前に、思いを語った。

 スーパーバンタム級初戦に向けて、仕上がりました。11月7日からの米国ロサンゼルス合宿では、(WBA世界2位の)ラモン・カルデナス選手(米国)らを相手に実戦練習を重ねましたが、自分の体を、よりコントロールできている部分と、その正確性を高めていくという点で良い肉付けができたかなって思える部分がたくさんありました。10日に帰国してからも、しっかり調整してきました。

 バンタム級の時に比べて、よりスピードはついていると思います。加えて、キレというのも出てきている感覚があって…。体を絞って体重がだんだん落ちていくと、さらにスピードとキレが増した感じになりました。階級を上げるにあたり、フィジカルトレーニングは下半身を重点的にやりました。下半身でしっかりと地面をとらえ、地面の反発を使って自分のエネルギーをパンチに乗せて最大限に相手に伝えるという一連の動作を、しっかり感覚としてつかめました。改めてパワーも増したと実感しています。

 正確性を高めるという点では、どのパンチが当たっていくかというのを集中して確認してきました。

階級を上げることで、相手の耐久力は上がるでしょう。エルナンデス選手はタフで打たれ強い選手だとあえて思って調整するようにしました。より力むことなく、相手にダメージを与えていくというところでは、ポイント、ポイントでしっかり当てていくことが大事。実戦練習相手の強度も今回は高かったので、集中力がより高まったと思います。

 僕はシャドーボクシングで、様々な工夫をしています。スパーリングでは相手を自分の思うように動かすことが難しいですから、色々なテーマを持ってできるのがシャドーボクシング。イメージでしかありませんが、頭の中で作ったイメージをリング上で体現していく。自分が攻めに出て行ったり、その逆で攻められたり。自分が追い詰められている場面では何が必要なのか、どんな動きをしたらいいのか。手を出さずにディフェンスだけに集中するラウンドだったり…。

 どちらか一方の目を閉じてやったりもします。もしも相手のパンチを受けて自分の顔が腫れ、どちらかの目がふさがったら、どういう視界になるのか。

そういう状況もイメージしておけば、試合で実際にそうなってもパニックにはならないでしょうから。あらゆる状況を想定し、冷静に対応するためです。

 いわゆる「ぐるぐるバット」のように、立った位置でグルグルと体を回転させ、三半規管をちょっと揺らしてみてからシャドーボクシングをしたこともあります。頭がグラグラしている状態で、どれだけ自分の軸というか、バランスを保ちながらボクシングができるかというのを試したんです。実際にやってみると、なんせ視界がグルグルしちゃっているので難しい部分はあるんですけど、どれだけのダメージを負って自分の状態がどうであるか分からない状況というのを感覚として持っておくだけで、パニックになることなくバランスは取れるかなって。そう頻繁にはやりませんが。あんまりたくさんやると、気持ち悪くなっちゃうので、ほどほどに。えへへへ。

 誰かと対戦していることもイメージします。もちろん、井上尚弥選手との対戦を想定してシャドーやサンドバッグ打ちなどをすることがあります。

 今年の誕生日(1月2日)、2025年の目標は「統一王者」と書きました。そして6月にWBC、IBF世界バンタム級統一王者になりました。

やはり、目標は口に出していくべきだと思います。それが実現していくことへの近道で、周りの人たちの自分に対する思いや期待…波動っていうんですかね。そういうのが自分にも伝わってくる。だから、自分の思いというのをなるべく言葉にして、皆さんと共有しながら駆け上っていきたい―。そういう気持ちにさせてもらえる1年でした。

 9月にバンタム級の統一王座を返上して、新たな挑戦ができることになりました。すごく刺激的な日々を送れることができています。これがまた、成長につながっていくんだろうなという感覚はすごくあるので、いい時間を過ごせていると思います。「自分にしかないもの」を、リングの上でしっかりと発揮できるようにすることに重きを置いて練習してきました。すなわち、それが自分にできること。27日は自分のボクシングをして、そして勝ちます。感謝! 感謝!(世界3階級制覇王者)

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