俳優の染谷将太が29日にNHKラジオで放送するオーディオドラマ「だまっていない」(夜10時5分)の脚本、演出を担当する。このほど東京・渋谷の同局で取材会を行った。

 ラジオドラマで“裏方”に回るのは初めて。制作には「高校生の時に仲野大賀と自主映画サークルを立ち上げて自主映画を作った。協賛を得てショートフィルムを作ることもあった」と興味を持っていた。自らを「役者として自分の話している声のトーンをしゃべりながら自分の耳で気にする役者でもある」と分析する染谷は「音だけで何か物語を作ってみたい」と親交があった音楽家の渡邊琢磨さんに相談していた。

 染谷は先日まで放送されていた大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」に歌麿役としてレギュラー出演。「歌麿と共に過ごしその間にオーディオドラマを」と「だまっていない」との“二刀流”。「(オーディオ)ドラマの台本を書きつつ、NHKにくると歌麿を演じて。中空きで(『だまっていない』の)打ち合わせをして。オーディオドラマの収録をして、次の日は『べらぼう』、その次の日はNHKの編集室に…。1人でID借りて編集室行って局員になった気持ちで…」と多忙の日々を回想。時には「べらぼう」のスタッフの力も借りながら、作品を形にし「充実した不思議な時間を楽しく過ごさせてもらった」と懐かしんだ。

 キャスティングも自ら行い、妻で女優の菊地凛子、「べらぼう」をきっかけに声優津田健次郎にも声をかけた。

津田については「台本を書いている段階で津田さんの声が流れ始めている。あてがきのような感じだったので、なにをしゃべっていただいても説得力がある。そこに甘えた本だった」と笑った。染谷自らにセリフはあるが、重きを置くのは演出面。「芝居のイメージもえのあるなしでこんなに変わるんだ」。オーディオドラマならではの違いが影響しており「映像なら撮ったらすぐにチェックできるし主観と客観を意識しやすいけど、スタジオに入って閉鎖的な空間でやると主観が強くなりそう」と説明した。

 ジャンルはSF。「日常的なものは想像しやすいし、より突拍子もないものがよかった。いかようにデモ想像できる世界が楽しい」と選定。架空の存在である宇宙人も登場し、効果音にもこだわりがある。歩く音では「ホウ砂と洗濯のりを混ぜて、スライムっぽいのを作った」と自らの手を動かし、鳴き声では「電話口でこんな感じでやって」とプロに自らの声で伝えるなど創意工夫を重ねた。

初めての体験に無我夢中になった染谷。

作品の完成が近づくにつれて「ついついここ直せるかなみたいな、音だけだとゴールがない。いくらでもやれる。音って無限大すぎて、違うパターンも聞きたくなる」と没頭。「最終日は役者としての仕事がおしりにあったので、じゃあ終わり。じゃないと終われないくらい、永遠にやるほど楽しかった」と笑みを浮かべた。今後の続編、新作の可能性について聞かれると「テーマみたいなのをずっと色々な形でもって考え、感じている。大きいテーマはいくつかある」と意欲を見せていた。

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