東京・両国にある「江戸東京博物館」の2026年3月31日リニューアルオープンに向けて100日前記念イベントが20日までに行われ、新情報の発表とともに急ピッチで進む工事中の内部が一部公開された。JR両国駅隣接の施設では藤本照信館長と、今回の改修で空間デザイン監修などに携わった建築家・重松象平氏によるトークセッションも行われ、藤本館長は「100日後にぜひ足を運んでいただけたら」とあいさつ。

重松氏も「世界に誇れる東京の名所になっていく感じがする」と期待感を示した。

 約4年もの時を経てリニューアルオープンする最大の見どころは「大型模型の新設・仕様のアップデート」。5階の常設展示室にあった大型模型「朝野新聞社」が明治時代の銀座の象徴「服部時計店」へと改修。原寸大で再現され、日本橋の上から臨む光景は必見もの。芝居小屋「中村座」も一新され、内部に入れる体験型の展示になる。

 「常設展示の内容拡充」も注目ポイントだ。関東大震災からの復興を支えた東京市初の公営乗合自動車で現存する最古の車両、自動車初の重要文化財でもある「円太郎バス」が展示される。展示室内は「江戸の町並み」が再現され、江戸時代に迷い込んだようなタイムスリップの疑似体験ができる。

 2022年4月からの大規模改修にあたっては建築家・重松氏がパートナーを務める世界的建築事務所OMA(Office for Metropolitan Architecture)とともに東京を象徴する博物館づくりに挑戦。重松氏は22年の「クリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ」展(東京都現代美術館)や今年開催されたルイ・ヴィトン「ビジョナリー・ジャーニー」展(大阪中之島美術館)でも空間デザインを手掛け、今回の改修で建物内外の空間デザインを再構成した。JR両国駅からの導線に鳥居をイメージした24本のモニュメントを設置。内側はデジタルサイネージで入館前から期待感が高まる仕掛けが施される。

 3階屋外「江戸東京ひろば」の約4000平方メートルもの天井面と柱面には、約35万点ある収蔵品の一部などがダイナミックに投影される。5階の常設展示室から見上げた6階への吹き抜けの天井にも浮世絵風の江戸の空などが映し出され、光と映像を駆使した没入型の体験演出も注目だ。

 まさに江戸と現代が融合する。1階小ホール横の壁面も、江戸時代から続く左官技術を生かして仕上げられ、リニューアルにふさわしいエントランス空間に。このほか、26年は俳優の仲野太賀と池松壮亮が出演するNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」と連動した展覧会を行うなど、4つの特別展は開催されることも見どころのポイントになっている。

 1993年にオープンした江戸東京博物館は、建築家・菊竹清訓設計のユニークな建物で知られ、22年4月から大規模改修に入って休館。この間、収蔵物を展示する巡回展など国内だけでなくパリでも開催して人気を博し、今回4年ぶりに再館する。イベントでのオープニングで東京都生活文化局・古屋留美局長は「都では現在の東京の礎を築いた江戸の歴史や文化に改めて光を当て、その価値や奥深い魅力を国内外に届けていくという取り組みを進めている。江戸東京博物館はその中で発信拠点になる」と説明。来春のリニューアルオープンでさらなるインバウンド集客、経済効果も期待されそうだ。

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