北海の攻撃の中心、MF萩野煌也(3年)が「尊敬する父」と最後の選手権舞台に臨む。父で同校OBの英明さん(52)は、現J1広島で1995年から2年間プレーした後、2000年から外部コーチを務める。

次男は父と挑む大舞台へ「最後に一緒に戦えるのはうれしいし、恩返しになれば」。29日の1回戦・大津(熊本)戦での勝利を、親子で目指す。

 物心ついた時にはボールを蹴っていた。父は90年度の全国選手権に出場。鹿児島実に初戦で0―3で敗れた一戦を、息子は映像で見ている。「自然と北海に行きたいと思っていた」。背中を追い、指導者と選手という立場を選んだ。

 「グラウンドと家での関わり方は全く違う」と公私は完全に分けてきた。普段は「パパ」と呼ぶが、練習中は「萩野さん」。個人的なアドバイスも3年間、ほぼ受けなかった。英明さんは「親としての目線はほぼない。フラットに北海の一員としてメンバーに食い込めるか。

そこは自分の力でつかむものだから」と方針を貫き、競わせてきた。

 1年時は全国選手権でもベンチ入りしたが、昨年は試合に絡めなかった。「少し慢心したところはあった。2年生になって鼻を折られたが、OBで4歳上の兄(長男・雄心さん)はメンバーに入れず、悔しい思いをしているのを間近で見てきた。自分がここで腐るわけにはいかない」。課題のフィジカル強化へ、食事から見直し、正ボランチの座を最後につかみ取った。

 父からは「男になって帰ってこい」と激励された。2年前は先輩と勝利を喜び合うも、ピッチには立てなかった。「自分が攻撃で違いや良さを見せないと大津には勝てない。そこは一番意識してやりたい」。強い自覚でチームを引っ張り、最高の瞬間を味わいにいく。(砂田 秀人)

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