◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 YouTube「報知プロ野球チャンネル」の制作で巨人の選手を追いかけている。今年最も印象的な出来事は長野久義(敬称略)の引退だ。

エピソードを紹介したい。

 写真部で担当カメラマンをしていた2024年5月25日の阪神・巨人戦。試合開始約4時間前、私は球場入りする選手にあいさつをしていた。長野が私の前を通過して10メートルほど過ぎた頃、真顔で「相川君、ちょっと…」と呼ばれた。普段、写真を撮られるのが好きではない長野。内心ドキドキで近づくと「昨日のきっしゃんの写真すごく良かったよ」

 前日24日は戸郷翔征がノーヒットノーランを達成した。長野は水入りペットボトルを持って真っ先に祝福に駆けつけた。その水は戸郷ではなく、見事に岸田をとらえていた。「2人とも良い表情だから、戸郷だけじゃなくて岸田にもプレゼントしてあげて」と肩をたたかれた。

 長野から後輩選手の写真を頼まれることはあっても、長野本人が写った写真をお願いされたことは一度もない。翌月、長野は通算1500安打を達成した。「絶対にプレゼントしよう」。

後日、頼まれてもいないのに写真をパネルにして手渡すと「俺の写真はいいのに。でも、ありがとう」。照れくさそうに受け取り、さらにこう続けた。「これからも若い選手が活躍した時は写真よろしくね。あと、俺の分はもういいから」。長い現役生活、お疲れさまでした。(デジタル担当・相川 和寛)

 

 ◆相川 和寛(あいかわ・かずひろ) 来年4月、約10年ぶりにフルマラソン挑戦予定。

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