「にしたんクリニック」「イモトのWiFi」などを手がけるエクスコムグローバル株式会社が、このほど創業30周年を迎えた。年商333億円、個人資産300億円を稼ぎだし、「にしたん社長」としてお茶の間でもおなじみとなった西村誠司代表取締役社長(55)がスポーツ報知のインタビューに応じ、激動の起業家人生を振り返った。

(全3回の1回目)

 「NGはまったくないんで。何でも聞いてください」。そう笑顔で切り出した西村社長は創業記念日にあたる先月17日、都内のホテルで「創業30周年謝恩パーティー」を開催。オープニングアクトとして女優・黒木瞳(65)がキレキレのダンスを披露するなど、計5組の豪華アーティストが出演した。約1年間かけて準備したパーティー全体の総制作費は2億円以上。まさに圧巻の内容だった。

 「ちょっと超えちゃいました(笑い)。予算オーバー? CM作りもそうなんですけど、予算って決めてないんです、実は。演者さんや演出を積み上げた結果、この金額になっちゃった、みたいな感じなんで。上場企業だとちゃんと予算通りっていうのはあるんですけど、オーナー企業なので。とにかく費用がいくらかかろうが、自分がこれでいいなっていうものを作ることにこだわった」

 パーティーでは「皆さんの支えがあってこその自分」と感謝の言葉を繰り返した。来場者を楽しませようとする姿勢が、ド派手な演出に表れていた。

 「みんなが喜んでくれれば、笑ってくれればいいなと。損得は後で付いてくればいいっていう感覚でやっています。次やるんだったら、オープニングに矢沢永吉さんが来たら面白いですよね。永ちゃんがバーンって。実現できるかどうかは別として。いきなりレディー・ガガが来るとか。どうやって呼んだんだ? みたいな」

 25歳での起業から30年。2年後に7000万円の借金を背負い、コロナ禍では海外Wi―Fiレンタルサービス「イモトのWiFi」の売り上げが98%減と大打撃を受けた。成功の裏には、窮地を乗り越えてきた過去があった。

 「長かったですね、やっぱり。楽しかったな、というより苦労の方が多いかな。苦悩の連続ではあったんだけども、そういうところからしか何かって生まれないと思います。

悩みに悩んで、切羽詰まって瀬戸際になって絞り出されるみたいなところはあるのかな」

 「起業家人生におけるターニングポイントは」との問いには「日々の積み重ね」だと強調した。

 「コロナ禍の時も一瞬で解決策(PCR検査サービス)が出たわけじゃなくて、これまでの何十年間のちっちゃな苦労の積み上げがあったから出た。華やかなイメージを持たれているかもしれないですが、もう本当に日々の積み重ね。毎日がつらくて心が折れそうになっても土俵際で食いしばることが大事。その時に日々の努力が条件反射的に出る。成功した経営者は皆同じだと思います。我慢強い・踏ん張れる・粘りがきく。僕の負けん気の強さは子どもの時の(貧しかった)環境があったから見返さなきゃ、とか馬鹿にされたくない、という潜在意識があるのかもしれない」

 ◆西村誠司(にしむら・せいじ)1970年5月20日、名古屋市生まれ。55歳。名古屋市立大卒業後、93年にアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。95年11月にエクスコムグローバルの前身にあたるインターコミュニケーションズを設立。97年に海外用レンタル携帯電話事業を始め、2012年に「イモトのWiFi」ブランドの提供を開始。

19年からメディカル事業に参入し、「にしたんクリニック」の立ち上げを支援。20年には構想から約1か月でPCR検査サービスを実現させた。家族は夫人と2男1女。

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