歌舞伎俳優の市川團十郎(48)がこのほど、東京・新橋演舞場の正月公演「初春大歌舞伎」(1月3~27日)への意気込みを語った。

 歌舞伎が題材で邦画実写の歴代興収記録を22年ぶりに更新した映画「国宝」(吉沢亮主演、李相日監督)の大ヒットを追い風にして時代物の名作「熊谷陣屋」に挑む。

歌舞伎に関心を持つ人が増えていることを肌で感じ、「より古典作品を楽しんでいただける状況になった。今なら、学んでみようと思ってもらえるのでは。歌舞伎にがっぷり四つで組んでいく團十郎でありたい」と力を込めた。

 「映画のヒットは歌舞伎役者として、うれしい。役者さんの演技、カメラワーク、編集技術が素晴らしい」と太鼓判。名門の御曹司として「僕は(横浜流星が演じた)俊介側ですよね。うちも歌舞伎十八番など、受け継いできたものが多い。『全部持っていくのか?』というセリフは身につまされました。シーソーのような喜久雄(吉沢)と俊介(横浜)の人生は見応えがありましたね」。

 2代目中村吉右衛門さん(2021年死去、享年77)の教えを胸に刻み、「熊谷陣屋」の熊谷次郎直実を演じる。「熊谷の型は9代目團十郎が作り、初代吉右衛門、初代白鸚から播磨屋のおじさん(吉右衛門さん)に受け継がれた。だから初役の時(15年)、僕に『返すよ』とおっしゃったおじさんの思いを重きを持って受け止めました。

改めて稽古をして臨みたい」と気を引き締めている。

 「国宝」の喜久雄と俊介は幼い頃からしのぎを削り、成長していくが、團十郎にとっては8代目尾上菊五郎(48)が特別な存在だ。「同い年で同じ学校に通って、同じ稽古場で汗を流してきた。運命ですよね。彼の女形に魅力を感じるので、僕が立役として出る時に相手役をしてくれるとうれしい。死ぬまで一緒にやっていくと思っています」と揺るぎない信頼を寄せる。

 「春興鏡獅子」では團十郎が小姓弥生後に獅子の精を勤め、胡蝶役の長女・市川ぼたん(14)、長男・市川新之助(12)と親子共演する。團十郎が歌舞伎人気の高まりを一層、加速させる。(有野 博幸)

 〇…團十郎は、長女のぼたんについて「幼い頃から稽古を積み重ねているから、同世代の歌舞伎俳優にも負けないくらい踊りができる。それは認めています」。将来は女優や舞踊家などの選択肢が考えられるが、「本人といつも話し合っています。舞踊家として『團十郎娘』『藤娘』『鷺娘』『道成寺』のような演目をやるのも一つの道かなと思います」と語った。

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