「ジャンボ」の愛称で親しまれた男子ゴルフ界のレジェンド、尾崎将司さん(本名・尾崎正司)が23日、S状結腸がんのため千葉市内の自宅で死去した。78歳だった。

 【評伝】

 尾崎さんは「反骨心」を原動力の一つとしてきた。徳島・海南高から1965年に西鉄に入団。投手として高卒新人から1軍に上がり17試合に登板したが結果を残せなかった。ゴルフはプロ野球入り後、21歳から始め、70年4月にプロテストに合格して転向。登録名を本名の「正司」から、「将司」へ変更したのも新たな世界に挑む決意の表れだった。

 転向した理由の1つに5年間で99勝した同期の投手・池永正明さん(22年死去、享年76)の存在が大きかった。「池永に勝ちたい」という気持ちが野球を辞める理由だったといい、その勝負をする舞台がマウンドからゴルフコースに。「野球では負けたけど、違う世界ではあいつを追い抜く」と語っていた。

 プロ野球選手としての実働期間は3年間(65~67年)。約半世紀にわたり、携わったゴルフ界では数々の華々しい記録を打ち立てた。野球で培った体幹の強さや勝負勘は個人競技で生かされたが、50歳を過ぎ周囲から体力の衰えを耳にすると燃えた。3勝を挙げた98年。

7月のヨネックスオープン広島で1勝目を挙げた際、プロ野球時代の「パワーを取り戻したい」と語っていた。当時51歳。バットスイングと鉄アレイを使った練習を大会期間中も宿舎で続けていたが、満足していないようで「昔は950グラムのバットを振ってブンと音がしたものだが」と不満を漏らした。

 05年11月の民事再生手続きではコース外で思わぬ苦境に立たされたが、困難を乗り越え、可能な限りツアーに出場。自身最後の優勝となったのが02年「全日空オープン(現・ANAオープン)」。当時55歳。最年長優勝記録は、いまだ破られない。

 多趣味でも知られた。75年に歌手デビューし、平尾昌晃さん作曲の「君は今」をリリース。87年の「Summer Love」は青木功と共演したビールのCMソングとなりヒットした。盆栽の愛好家で「盆栽名人」とも言われた。紅茶やワインにも造詣が深く、自宅にはロマネ・コンティなど高級酒を収集していた。

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