シンガー・ソングライターの高橋優(41)が、26日から故郷の秋田・あきた芸術劇場ミルハスからメジャーデビュー15周年の全国ツアー「自由たる覚悟、然として奏ず」(来年7月5日まで28都市30公演)を開催する。「福笑い」や「明日はきっといい日になる」「虹」など、3枚組み全45曲収録の15周年ベスト盤「自由悟年(じゅうごねん)」を引っさげたツアー。

自身の誕生日に、地元での開幕に「(スタッフさんが)そうしてくれました。秋田で42歳を迎えます!」と喜びをかみ締めた。(加茂 伸太郎)

 高橋の真骨頂と言えば、「魂の叫び」ともいえる全身全霊のライブにある。数百人のライブハウスでも、2000人規模のホールでも、8000人規模のアリーナでも、120%の全力投球。配信全盛の時代に変わっても、音楽に対する姿勢は変わらない。

 「みんなが音楽を必要に感じる時って、気持ちが萎えそうな時だったり、物事が思いどおりにいかない時だったりする。音楽には気持ちを癒やし、心を潤す力があると信じている。だから、僕は(音楽を通じて)悲しむ人に寄り添っていたいです。何があっても(ライブに来た人が)希望を感じられるような表現をすると決めています」

 音楽活動の転機は東日本大震災。クリエイティブディレクター・箭内道彦氏のプロデュースを受け、10年7月にデビューしたが、8か後に大震災が起こった。自身もこれからというタイミングで、ライブの延期など活動計画が白紙になった。

 「消えない傷痕ができました。

秋田県も東北なので震災は忘れられないし、僕の中では切り離して考えられない経験です。つらい経験だったけど、自分自身の考える力が養われた気もします。自分の目で見て、耳で聞いて、感じたものを歌にしていくんだと(歌い手としての覚悟を)決めました。熊本地震や能登半島地震もあった。戦争のない世界から戦争のある世界に変化してきている。それぞれが表現のターニングポイントになった気がします」

 ライフワークにするのが、県内の全13市での開催を掲げる野外音楽フェス「秋田CARAVAN MUSIC FES」。都道府県別人口減少率、高齢化率がワースト1位のふるさとの起爆剤になればと、秋田音楽大使として16年から始めたフェス(20、21年はコロナ禍で未開催)で、残り6市となった。

 「パンデミックを経て、ライブ中に声が出せない時期もあったし、時代と共に歩んできたフェス。順調にいけば、5年後はキャラバンフェスがラスト1回になっている。音楽が希望の光になるように(歌声を)届けていくことが僕の指名だと思い、それに向けてやっていきたい」

 全身全霊のライブは、時として体に支障をきたすことも。近年は声帯炎を発症する機会が増えた。

 「体力を付けなくちゃいけないですね。

とにかく出しきるやり方は、工夫の余地ありです。ただ、老いていくことを嘆かわしく感じていないというか。年齢を重ねる度に、答えが見つかっていけばいい。そうすれば、シンガーとしての年齢が長く保てるのかなと思います」

 第一線で走り続けてきたが、5年後の20周年に向けて「高橋優と言えば、ライブ。どんな風に音楽の形が変わっても、僕自身は変わらず、今のスタンスを大切にしていきたい。この記事を読んでくれた『あなた』にもライブを体感してほしい。その日が来るのを楽しみにしています」

 既存のファンはもちろん、新たなファンとの出会いも心待ちにしている。

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