◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 初めてペンライトを振ってコンサートを見た。隣の席のマダムから「振りなさい!」と半ば強引に渡され、ステージで熱唱する氷川きよしに声援を送った。

 10月下旬の相模原公演。芸能記者時代の縁で、数日前に本人から「今の私を見に来てほしい」と連絡があり、1人で足を運んだ。ファンは高齢者ばかりだが、若い女性の姿も。音楽担当だった18年から客層の変化を感じた。男らしくこぶしを利かせる演歌・歌謡曲中心の前半から一転、美しさと妖艶(えん)さが魅力のポップスとロックへ。掛け声は「きよしく~ん」から、愛称「KIINA.(キーナ)~」へ変わった。

 7年前のインタビューでは「何で自分を押し殺して羽を広げないんだ。今後は自分の信念を生かしたい」。心身のバランスに悩み、昨年春まで1年半の活動休止時に食事した際は「もっと殻を破りたい」と話していた。ライブ終盤は高速ラップと激しいダンス。4歳の時に初めて人前で歌った松田聖子の「赤いスイートピー」をしっとり歌い、もはや殻なんてなかった。

 さすがだなと感じた一幕がある。

アップテンポな楽曲を歌う際、高齢ファンに「リズムに付いていくのが難しい時は無理しないで座って休憩してくださいね」と呼びかけた。自分を押しつけすぎず、気遣いを忘れないのが氷川流。変化し続ける姿に賛否両論はあるはずだが、楽屋で対面した48歳は「どんどん新しいことをやりたい」と笑った。

 自分らしく生きる大切さ―。記者も、世間の目や批判的な声を気にして取材や行動にブレーキをかけてしまいがち。会場で手に入れたリュックに入りきらないほど大きな氷川の写真入りうちわを眺めながら、背筋を伸ばした。(ゴルフ担当・星野 浩司)

 ◆星野 浩司(ほしの・こうじ) 2008年入社。芸能、サッカー、今年からゴルフ担当。

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