人気脚本家の内館牧子(うちだて・まきこ)さんが17日、急性左心不全のため死去した。77歳だった。

2000年から約10年、女性で初めて大相撲の横綱審議委員会委員を務め、在任中は舌鋒(ぜっぽう)鋭く横綱・朝青龍を批判するなど、角界を叱咤(しった)激励してきた。22年9月の秋場所を前に、現横綱の豊昇龍、大関・琴桜にも言及したインタビューを再録する。

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 内館氏の相撲との関わりは4歳頃が始まりだった。

 「いじめられっ子だった私を、いつも助けてくれた男の子がいたんです。今思えば、力道山に似ていた。その頃に力士や体の大きい男の子が好きとすりこまれたんでしょうね。本場所を初めて見たのは大学生の頃です。当時は蔵前国技館で、レトロ感が好きでした。会社勤めしてからは、地方を含め(年間)90日の半分は行っていたでしょうね」

 相撲の魅力は“異世界”を感じられるところと説く。

 「相撲の歴史は数千年、興行になってから250年と言われる。(角界には)現代とは違う考え方や時間が流れていると思っています。私は、この世とは違うどこか別のところから遣わされた印象の力士が好きでした。

鏡里は太鼓腹がこの世離れしていて、初恋でしたね」

 おすすめは幕下以下から観戦することだという。

 「序ノ口、序二段からとは言わないけれど、幕下上位ぐらいからは見てもらいたい。幕下上位と十両の下位は1、2枚しか違わないのに(待遇面などで)天国と地獄の差があるわけです。でも『悔しかったら強くなれ』という世界。下位力士の気概を知ってほしい」

 00年には女性初の横審委員に就任。“天敵”とされた朝青龍との“バトル”も話題になった。

 「(就任は)人生において一番の驚きですね。朝青龍は頭のいい人で、力士としてすごく買っていましたが、外国の伝統文化で禄(ろく)を食(は)んでいる意識は感じられず、断じて許せなかった。相撲は『保守』するところと『変革』するところを(日本相撲)協会もファンも認識しなければなりません」

 今春には池坊保子、紺野美沙子両氏が横審委員に。女性委員の先輩として2人にエールも送った。

 「すごくいい人選だと思いました。お2人とも相撲好き。

別に女性ならではの視線とかではなく、ずっと見てきて、感じていることをおっしゃってくだされば」

 現在の土俵をどう見ているのか。まずはともに祖父に元横綱、父に元関脇を持つ2人の力士を挙げた。

 「琴ノ若(現・琴桜)はまだ3、4歳の頃だったと思いますが、祖父の元琴桜と話していると、すでに孫への期待を感じました。(祖父が大鵬の)王鵬はお坊ちゃんぽい印象ですが、幼い頃、大鵬に飛びついて殴ったりするんですよ。大鵬はその気の強さがうれしそうで、組み敷いてやっつける。琴ノ若も王鵬も素質は破格ですから、目指すべきは横綱のみです」

 “天敵”のおい、豊昇龍も注目するが、注文も。

 「豊昇龍も単に荒っぽいだけでない相撲を見せてほしい。今、横綱は満身創痍(そうい)で大関はあの通りです。それでも客が入るわけを、協会、力士は重く考えるべき。横綱の孫2人や若元春、若隆景らが本格的に強くなるところを見たいんです。見せないとなりません」

 “キャラ立ち”する力士が出てきてほしいとも願う。

 「昔は『潜航艇・岩風』、『人間起重機・明武谷』、『褐色の弾丸・房錦』など取り口によるあだ名がついていた。

それが最近なかなかなくなりましたよね。あだ名が付く技を持つ力士は必須です」

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