報知新聞社制定「令和7年(2025年)第68回報知年間最優秀力士賞」に横綱・大の里(25)=二所ノ関=が26日、初選出された。都内で行われた選考委員会では、3度の優勝や日本出身としては1997年の横綱・貴乃花以来となる70勝到達での年間最多勝(71勝)が評価された。

26年の抱負を「心」と記した。精神面を成長させて大横綱への道を歩み、次なる目標を年間80勝に設定。来年初場所初日(1月11日、東京・両国国技館)に表彰が行われ、スポーツ報知杯、賞金が贈呈される。

 念願の初受賞に、大の里は喜びを隠さなかった。吉報が届き、「本当に取りたかった賞。うれしいです」。大鵬、北の湖、千代の富士、貴乃花、白鵬ら過去の受賞者一覧を食い入るように見つめると、「何度も受賞しているのは歴代の大横綱」と重みをかみしめた。

 25年は文句なしの実績を残した。大関だった春場所を12勝3敗で優勝。初の綱取りだった夏場所は初日から14連勝し、初の連続V。場所後に初土俵から最速となる所要13場所での横綱昇進を決めた。秋場所では横綱・豊昇龍(26)=立浪=との優勝決定戦を制した。

「今年の初めは大関の番付から落ちるのが怖かった。横綱になれて、優勝も3回するなんて想像しなかった」と振り返った。

 九州場所では日本出身では97年の貴乃花以来となる年間70勝に到達。71勝で初の最多勝を獲得した。それでも、「70勝してすごいかと思ったが、上には上がいた。横綱になったからこそ大横綱の偉大さを知ることができた」と刺激を受けた。そして、「前回(95年)日本出身で達成した貴乃花関のように、年間80勝したのは大横綱ばかり。それを目指していきたい」と新たな目標を掲げた。年6場所、90日間開催での高いハードルだが、25歳の横綱に不可能はない。

 11月の九州場所千秋楽、左肩鎖関節脱臼で休場。来年1月初場所での復帰へ、入念な調整を続けている。場所後の冬巡業も休んだが、茨城・阿見町の二所ノ関部屋で黙々とリハビリし、「相撲と向き合う1か月だった」と明かした。

その中で気づき、色紙に記した来年の抱負は「心」の一文字。「横綱は心技体の中で、本当に『心』が大事だと思った。強いだけではなくブレない心を持ちたい。横綱になったから終わりではなく、勝たないといけない番付」。自問自答してたどり着いた境地だ。

 25日には力士の当たりを受け止める稽古を開始した。患部の回復具合は良好で、「初場所は優勝したことがないし、初日に表彰式がある。賞に恥じないように頑張りたい」とうなずいた。26年も相撲道に精進し、令和の大横綱への道を歩む。(山田 豊)

 【選考過程】 選考委では初の年間最多勝となる71勝、年間の優勝回数でも最多の3回を記録した大の里を中心に議論が進んだ。長谷川委員は「数字の上でも特筆すべきものがあり、横綱として優勝したことも大きい」と昇進2場所目での優勝を評価。稀勢の里以来、8年ぶりの日本出身横綱の誕生にもなり、柳沼委員が「新たなヒーローが出てきたという印象を受けた。

伸びしろも感じ、来年以降が楽しみ」と続けた。

 一方で安青錦の相撲内容を評価する声も多く上がった。宮田委員は「九州場所の13日目まで大の里で文句なしだと思っていた」とした上で、九州場所の優勝と「落ちない姿勢」を評価。能町委員も「以前から有望な力士と注目してきたが、安定感があり、相撲内容が素晴らしい」とたたえた。

 ただ、安青錦は初場所は十両。仮に幕内にいたとしても、年間勝利数で並ぶには全勝が必要だった。刈屋委員は「来年から大の里と安青錦の“大安時代”が来るのでは」と期待を寄せつつ、「今年は迷わず大の里」と発言。満場一致で大の里の初受賞が決まった。

 ◆選考委員     

 ▽宮田亮平(金属工芸家、前文化庁長官、元東京芸術大学学長)

 ▽刈屋富士雄(立飛ホールディングス執行役員、元NHKアナウンサー・解説主幹)

 ▽能町みね子(文筆家)

 ▽長谷川剛(報知新聞社代表取締役社長)

 ▽柳沼雅裕(報知新聞社取締役編集局長)

 ◆大の里 泰輝(おおのさと・だいき)本名・中村泰輝。2000年6月7日、石川・津幡町生まれ。25歳。小1から相撲を始め、新潟・能生中、同・海洋高を経て日体大。

2年連続でアマチュア横綱に輝いた。二所ノ関部屋に入門し、一昨年夏場所で幕下10枚目格付け出しデビュー。昨年夏場所で最速となる初土俵から所要7場所でのV。秋場所後には昭和以降で最速となる所要9場所で大関昇進。今年の夏場所後には最速の所要13場所で横綱昇進。得意は突き、押し、右四つ、寄り。通算170勝54敗。192センチ、188キロ。家族は両親と妹。プロ野球では阪神、サッカーではJ1鹿島を応援している。

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