人気脚本家で、女性で初めて大相撲の横綱審議委員会委員を務めた内館牧子(うちだて・まきこ)さんが17日、急性左心不全のため死去した。77歳だった。

関係者によると、体調を崩し入院していたという。葬儀は近親者で行った。来春にお別れの会を予定している。NHK連続テレビ小説「ひらり」(92年)や大河ドラマ「毛利元就」(97年)の脚本を務めたほか、10年間務めた横審では横綱朝青龍への舌鋒(ぜっぽう)鋭い批判で話題に。近年まで執筆など精力的に活動していた。

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 内館さんは横綱・朝青龍が本当は大好きだったのだ。横審の一員として品格問題を追及することで「朝青龍の天敵」と呼ばれていた2003年。朝青龍が秋場所へ向けての朝稽古で出稽古に来た人気者の幕内・高見盛を“サンドバッグ”状態にして泣かしてしまうことがあった。

 翌日のスポーツ報知1面の見出しは「朝青龍鬼のシゴキ 高見盛泣かされた」。その朝、記事を読んだ内館さんが高砂部屋の朝稽古に駆けつけたのだ。横綱としての振る舞いをとがめに来たのかと思いきや、筆者の私を見つけると、「甲斐さん、最高だったわよ!」と大笑いし始めた。

 当時は大関・魁皇に綱取りがかかり、一人横綱の朝青龍はそれを阻みに行くという構図だった。

「カリスマ・ヒールがいてこそ、ベビーフェースの魁皇も光る。ここでフニャフニャされたら困っちゃうのよ」。

 内館さんはプロレスも大好きだった。プロスポーツが盛り上がるためには「悪役」の存在が不可欠だということを誰よりも理解した上で、あえて天敵役を買って出たのだと思う。(元大相撲担当・甲斐 毅彦)

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