◆プロボクシング「THE RING V:ナイト・オブ・ザ・サムライ」 ▽WBA・WBC・IBF・WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇4団体統一王者・井上尚弥(判定)WBC同級2位アラン・ピカソ●(27日、サウジアラビア・リヤド、ムハマド・アブド・アリーナ)

 【リヤド(サウジアラビア)27日=勝田成紀】メインイベントに登場した世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(32)=大橋=が、挑戦者のWBC同級2位アラン・ピカソ(25)=メキシコ=を3―0の大差判定で下し、自身が持つ史上最多記録を更新する6度目の4団体統一王座防衛(WBC・WBOは7度目、WBA・IBFは6度目)に成功。世界戦27連勝とし、史上最多25度連続防衛を果たした伝説のヘビー級王者ジョー・ルイス、50戦全勝で世界5階級を制覇したフロイド・メイウェザー(ともに米国)を抜き、単独史上最多に。

また一つ、ボクシング史に伝説を刻んだ。

 ガードを固めて警戒心を解かない挑戦からダウンこそ奪えなかったが、採点は大差に。ジャッジ3人の採点内訳は120ー108、119ー109、117ー111だった。差がついたが「今夜はよくなかったです。よくなかった」と自省した。来年5月に東京ドームで予定されている世界3階級制覇王者・中谷潤人(27)=M・T=との夢の対決が実現するか、ド直球で聞かれると「今夜、無事にお互い勝利できたということで、大橋会長と色々な方向性を含めて交渉していきたい」とした上で「日本のファンの皆さん、期待はしててください」と笑顔で宣言した。

 現代ボクシングでは極めて異例の「戦うチャンピオン」だ。年間4試合はデビュー2戦目から5戦目までの2013年以来12年ぶり。4団体統一王者の年間4度防衛は史上初で、全団体統一王座の年間4度防衛は2団体時代の76年ムハマド・アリ(米国)以来49年ぶりとなった。前戦9月に、「キャリア最大の強敵」WBA暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)とフルラウンドの防衛戦を闘ったばかり。わずか3か月間隔での連戦は、スーパーフライ級王者時代の2017年以来8年ぶりだ。井上は「戦うことが好きなので、常に緊張感と張り詰めた空気の中でいられるのは心地いい」とひょうひょうと語る。

 「今後のキャリアをより加速させていく一戦」との決意で、サウジアラビアのリングに初上陸した。アフマダリエフ戦では「毎試合KOは頭に入れているが、前回はここ数年では珍しく判定勝利を考えて試合に挑んだ」とあえて倒しに行かず、超絶技巧で難敵を完封。「今回はしっかりとKOを狙って、それを実行したい」と予告した2戦ぶりのKO勝利は実現しなかったが、173センチと長身のピカソ対策として、2階級上のスーパーフェザー級の日本ランカーで身長174センチの大谷新星(24)=真正=らとスパーリングを重ねた。

 次戦は来年5月、東京ドームで予定されている。世界3階級制覇王者・中谷潤人(27)=M・T=との夢の対決へ向け、井上も「ファンの方は来年の試合をイメージして、試合内容で『どっちが強い』『どっちが勝つ』という楽しみもあると思う。そういう見方もしてもらえたら、盛り上がる日になるんじゃないか」と話していた。

 しかし試合前日の26日、フェザー級に転向して日本男子初の5階級制覇を目指す仰天プランが急浮上。井上は「自分としては中谷戦も盛り上がるし、5階級制覇も盛り上がる。どちらにせよ自分は準備するだけなので」とビッグマッチを切望。大橋秀行会長(60)も「(中谷の)挑戦を受けるより(5階級制覇に)挑戦したいという気持ちが強いのも事実。本人の意思を尊重したい」と井上の胸中を代弁し、「明日の試合を終えて考えたい」と話していた。

 ゴールデンウィークの東京ドームのリングで対峙(たいじ)するのは、中谷かフェザー級世界王者か。

「昨日の自分を超えていくという意識で日々やっている」という孤高の王者が、新たな栄光へと突き進む。

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