◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 今年も多くの新人がプロ野球の世界に入る一方で、ほぼ同数の選手がユニホームを脱いだ。大半が契約を切られる形だが、楽天・岡島の幸せそうな引退試合が印象に残っている。

 日本一に輝いた13年夏、後半戦へ向けての酒席で星野監督(当時)に外野起用を直訴したのは有名な話。数日後、初めて「1番・右翼」でスタメン起用されると、その第1打席、両膝が震える緊張の中で放った中前打で、外野手としてのキャリアを切り開いた。

 「気持ち」と「根性」をベースにした泥臭いプレースタイル。17年7月、ファウルフライを追ってフェンスに激突し左肩を脱臼した。18年も影響が続き、シーズン打率1割9分の不振。食事の席だったとはいえ、1軍でプレーしている時期に「痛い…」という言葉を聞いたのは、最初で最後だった。19年2月、全治6か月となる大手術に踏み切った。

 けがの原因になったファウルフライについて聞いたことがある。フェンス際の打球、何が何でも捕るという気持ちだった。もし同じ打球が来たら「同じように捕りにいく」と言い切った。「元々キャッチャーだから、その1アウト、1ストライクを取るのがどれだけ大変か知っている。無理するなと言われても、それだけは聞けない。

けがしていいわけじゃないけど、捕れる可能性があるなら捕りにいく」。そんな選手だった。

 引退試合は現地を訪れることができず、中継を見守った。涙でボールも見えないはずなのに、代打での最終打席はプロ通算813安打目となるセンター返し。プロとしては大きくもない体で戦い抜いた14年間に、心から拍手を送りたい。(野球担当・山口 泰史)

 ◆山口 泰史(やまぐち・ひろふみ) 01年入社。プロ野球担当を中心に北海道、東北、北海道と3度目の支局勤務。

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