男子テニスで元世界ランキング4位の錦織圭(ユニクロ)が、12月29日に36歳の誕生日を迎えた。今年は5月に腰痛を発症し、22年の左股関節手術から左ひざ、右足首、右肩と続く故障で、24年を含め2度の引退危機があったという。

しかし、けがに負けたくない意地と、自身の才能を無駄にしたくないという思いで、現役続行に踏み切った。満身創痍(そうい)の体にむち打ち、自らを奮い立たせた錦織が、葛藤や現状について、スポーツ報知の単独インタビューに答えた。(取材、構成=吉松忠弘、全3回の3回目)

 錦織にとって、2025年だけでなく、この3年間は、けがとリハビリの繰り返しで、心が折れかけ、昨年と今年、2度も引退を考えたという。「今年がテニス人生最大の危機だった」「できないかもしれないと心が折れたことがある」の問いには、すぐに○の札を上げた。

 「去年(2024年)も、(22年に)左股関節の手術して、リハビリしながら戻ってきたが、また痛みが出て。肩とかもいろいろあって。去年(の4~5月ごろ)、もしかして辞めるかもと、人生で最初に(引退を)考えた」

 今年は、8月のシンシナティ・オープン後だった。腰の痛みが減り、テニスの調子も良く復帰した。しかし、痛みが再発し、プレーも最悪だった。

 「結構、本気で(引退を)思った。けがして復帰するプロセスを、この3年間、もう何回やったか分からない。これに、限界を感じた。

またゼロからスタートかと。自分のテニスが戻ってくるまでに、すごい楽しいわけでもない、苦悩する1年を過ごさないといけないのかというのが見えてしまった。テニスが悪いことは、いつもだったら、受け止められたと思う。1大会目か、ぐらいの感じで。でも、さすがに回数を重ねすぎて、頭が耐えきれなくなった」

 しかし、それでも現役続行を決めた。心は、まだ完全に折れなかった。理由はいくつかあった。

 「う~ん、まずは、テニスに対する(けがに負けたくない)意地。それと、自分の持っている才能を、ここで終わりにするのは、もったいないというのが僕の中に常にある。けがで終わるというのは、一番アスリートがしたくない最悪のシチュエーション。それで終わりたくない。あと、まだ、練習に行くとか、トレーニングするのが別に苦じゃない。

それが、まだ救いだった。でも、今は機械みたいに気持ちを『無』にして生きている。考えすぎると、また頭が沸騰しちゃう。結構、容量はパンパン」

 しかし、今後の現役生活が短いのは事実だ。引退後の人生にも、少し考えはある。「引退後の人生は描いている?」は少しだけ○だ。

 「日本のテニスの力にはなりたいと思っている。子供らを教えるのは好きで、楽しい。僕を超える選手、トップ10に入れる選手が育ってくれるような関わり方をできたらいい。テニスの場合、日本で育つのが、正直なかなか難しいと思っている。海外に行けるのがベストだけど、そこをどうするか。(代表などの)監督系は全くしたくない(笑い)。

それは他の人に任せて」

 第2の錦織育成を夢見て、ジュニアから指導したい。しかし、第2の錦織、錦織以上の選手は日本から生まれるのか。「自分以上の選手が日本から出る?」の答えは希望を強く込めて○だ。

 「現状は簡単ではないが、(希望が)あると言いたい。そもそも、日本で練習していると世界を味わえない。僕はモナコで練習をしてた時は、めちゃめちゃ良かった。トップ10の選手と毎日練習できて、そのテニスを直で味わえるだけで、自分の成長スピードが2、3倍になるのを肌で感じた。お金がかかるので、簡単ではないが、(海外で練習する)選手が増えてくれればいいなと。今、ナダル(スペイン)のところ(スペインのマヨルカにあるラファ・ナダル・アカデミー)に行っている阿部君(阿部素晴)とか才能あるいい選手なので、そういう選手が増えてくれたらと思う」

 最後の問いは「まだテニスは好き」だ。錦織は、即答の「○」で、「もちろん」と力強く付け加えた。

▼○×形式の質問と回答

問1 慶応チャレンジャーの結果は上出来だった ○

問2 日本選手と対戦するのは今でも苦手 ○

問3 今年最も調子が良かったのは香港OP ×

問4 14年と今では、テニス界が最も異なるのはスピード ○

問5 今、シナーと対戦したい ○×

問6 健康ならトップ100に返り咲ける ○

問7 自分が36歳とは信じられない ○

問8 プロになった時の想定よりうまくいっている ○

問9 今年がテニス人生最大の危機だった ○

問10 できないかもしれないと心が折れたことがある ○

問11 けがで辞めるのは避けたい ○

問12 成績が出ず無理と思ったらすぐに辞めたい ○×

問13 引退後の人生は描いている (少し)○

問14 引退したり拠点は日本に移したい ×

問15 来年の目標は決まらない ○

問16 いずれは自分の名前を冠した大会を作りたい ×

問17 自分以上の選手が日本から出る (希望)○

問18 テニスがまだ好き ○

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