国内で20年ぶりの万博として開催された「大阪・関西万博」は、開幕前の逆風を吹き飛ばし一般来場者2550万人超の盛況となった。閉幕から2か月以上が経過した今も“ロス”の声は続くが、実は一部の施設は今後も国内の様々な場所で見ることができる。

iPS心臓などの最新テクノロジーで注目を集めた「PASONA NATUREVERSE」は兵庫・淡路島に移転。落合陽一氏(38)プロデュースの「null2(ヌルヌル)」は、27年に横浜で開催される「国際園芸博覧会」での再展開を目指している。(古田 尚)

 鉄腕アトムがパビリオン上に鎮座していた「PASONA―」は今後、アトムが指さしていた兵庫・淡路島へと活躍の場を移す。パソナグループは創業50年目の節目に万博に参加。「人と自然、テクノロジーが共生し、人々が思いやりの心でつながる、真に豊かな世界の実現に向けての挑戦」を掲げ出展したパビリオンを、本社・本部機能の一部がある淡路島に「レガシー」として移転させるのだ。

 同社広報部によると、4つのレガシー展開を狙う。まずは「パビリオンレガシー」。「PASONA―」に加え、オランダ館も同島へ移設し、万博訪問がかなわなかった人の来場も見込んで経済活性化への寄与を目指す。2つ目は「人材のレガシー」。同社は会期中に100社を超える企業とタッグを組み、主に万博スタッフを中心に就職や転職を支援する「万博キャリアNEXT」を開催して次の就職先へとつなげた。

 3つ目は「アイデアのレガシー」で、様々なスタートアップ企業の企画提案イベントを開催。4つ目は「ネットワークのレガシー」。

万博を通じて企業とつながり、淡路島でのサービスでの連携を視野に入れている。

 パビリオンの展示内容や外観維持については、まだ確定していない。詳細は今後順次決定されるが、「ウェルビーイング(持続的な幸福)な社会実現のため」に(同社)、万博を通じて構築した様々なネットワークを通じて精査していく予定だという。

 一方、落合氏が手がけた「null2」は、クラウドファンディングによって、横浜園芸博への引っ越しが決定した。移設用の費用も2億7000万円以上が集まった。落合氏はクラウドファンディングについて「次の物語に進むことができるように、これから先も続いていく物語に、ぜひ参加していただきたい」と語っており、2年後まで続く物語に“ロス民”の期待もどんどん高まっている。

第2期区域は原則更地で返還

 万博会場となった大阪・夢洲の「第2期区域」と呼ばれる約50ヘクタールのエリアは今後、どう活用されるのか。日本国際博覧会協会の広報部担当者は「各パビリオンをどこに移築するか、部分的にどう活用するかは出展者次第。原則として全て解体して、法定期限の28年2月末までに、更地の状態で大阪市に返還します」と説明する。大阪府と市は並行して来春に「マスタープラン3・0」を策定し、会場跡地を活用する事業者を募ることになる。

 例外は「ハードレガシー」として一部保存することが決まっている「大屋根リング」と、樹木を利活用する「静けさの森」だ。同府市などが出展した「大阪ヘルスケアパビリオン」の跡地は、建物の一部を残置または敷地内で移築しつつ、「先端医療、国際医療、ライフサイエンスに関連する事業を実施する予定」(大阪都市計画局担当者)という。

 なお、会場北側の「第1期区域」は、カジノを核とした統合型リゾート(IR)として開発。30年秋頃の完成を目指し、一部で工事が始まっている。

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