◆第104回全国高校サッカー選手権 1回戦 (29日、浦和駒場)山梨学院(山梨)0―0(PK6―5)京都橘(京都)

 過去2度の優勝を誇る山梨学院は、PK戦の末に京都橘に6―5で勝利し、優勝した2020年度以来、5大会ぶりの初戦突破を果たした。1年生GK石井那樹が、試合中にはJ1神戸に内定の京都橘FW伊藤湊太(3年)のキックをストップ。

石井はPK戦でも6人目のキッカーを止め、チームを勝利に導いた。

 0―0の後半25分。途中出場した京都橘FW伊藤のキックを止めた石井は「試合中のPKは正直、やばいというか、絶望だったんですけど、もう考える前にやるしかないので。止めないともう負けちゃうし、1年生で(試合に)出てる立場なんで、ここで止めたらヒーローになれるし、まだ先輩たちとできるんで、その思いで絶対止めようと」と笑顔がこぼれた。

 今秋からポジションをつかみ、1年生にしてゴールマウスを任された石井は、PK戦でも鋭い予測で6本中5本のキックの方向を読み切った。ボールのセットからじっくりと時間をかける京都橘のPKにも一切動じず「笛が鳴って、自分がこい! って叫んだ後の結構時間あって。でもじれずに相手の目を見て、助走を見て、決めた方向、思いっきり飛ぶと決めていた。長かったですけど、そんなに長いとは感じなかったです」。キッカーとの駆け引きも楽しみながら、一身に注目を集める“GKの見せ場”で躍動した。

 また山梨学院のGKコーチは、かつて甲府などでプレーした同高OBの岡西宏祐氏(35)。伊藤は「大舞台は初めてで、すごく緊張していたのですが、アップで固くなっていたら、笑顔でリラックスさせてくれるような声かけをしてくれました。メンタル面のところで、本当に助けられています」と感謝。

試合中にもPKの駆け引きについてアドバイスを受けるなど、先発抜てきに応えた。

 この試合前日には、その岡西コーチがベンチスタートとなった3年生GK渡辺らに声をかける場面に出くわした伊藤。「自分が(試合に)出るのは、こういう責任があるんだなと実感して。その上で整理して、もう自分が出てるんだったらやるしかない。3年生の思いを背負っている。3年生の2人のGKは、本当に優しくて、自分のことをすごくサポートしてくれるし、本当に存在は大きいです」と話した。先輩達の思いも背負って立つピッチで、勝利に大きく貢献した。

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