スピードスケートのミラノ・コルティナ冬季五輪代表選考会を兼ねた全日本選手権が28日に閉幕し、女子のエース・高木美帆(31)=TOKIOインカラミ=、男子の森重航(25)=オカモトグループ=ら代表14人が出そろった。男子500メートルの元世界記録保持者で、2010年バンクーバー五輪銅メダリストの加藤条治さん(40)がメダル争いの行方を占った。

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 日本スケート連盟が掲げるメダル目標は「複数の金を含む5個」です。これを達成できるか。W杯前半4大会を戦っていて危機感を覚えていましたが、この選考会で少し光が見えた印象です。

 女子は高木選手の1000と1500メートル、吉田選手の500メートル、団体追い抜きは金メダルのチャンスがある種目です。高木選手は選考会を見てもまだ調整段階という印象ですが、本番に合わせてくる力があります。W杯で勝ち続けていた以前のように圧倒的という状況ではないですが、その中でどう戦っていけるか。周りのスタッフも全力で支えると思います。団体追い抜きも含めて、戦略と調子次第で複数の金メダルは十分に狙えます。

 個人的に楽しみにしているのが吉田選手です。世界記録を出したコク(オランダ)が圧倒的な存在ですが、吉田選手も今大会で小平奈緒さんの記録を抜いています。過去の記録を破り続けている成長ぶりは、見ていてすごく面白い。一気に逆転して金メダルというのもあり得ると思います。

 男子は500メートルでメダルを期待しています。森重、新濱選手はW杯でストルツ(米国)、デボー(オランダ)ら世界に離される完敗でしたが、選考会で派遣標準記録「SS」(34秒51)を大きく上回ってきました。森重選手はプレッシャーの中で34秒36を出したのはすごく評価できます。新濱選手も得意のインスタートを引けば、可能性がグッと上がります。倉坪選手も本番で爆発する可能性はあると見ています。

 ただ、どの種目も楽観視はできません。各国は新しい選手がどんどん出てきて、絶対的な選手が少ない今の日本代表は不安定な波の中にいます。ですが、奥底には希望の光がある。その光を強くしていけるかは、選手・スタッフのこれからの頑張りにかかっています。

 ▽代表選手と出場予定種目

 ◆男子

▽500㍍ 森重航(オカモトグループ)、新濱立也(高崎健康福祉大職)、倉坪克拓(長野県競技力向上対策本部)

▽1000㍍ 森重、山田和哉(ウェルネット)、野々村太陽(博慈会)

▽1500㍍ 山田、野々村、蟻戸一永(ウェルネット)

▽5000㍍ 佐々木翔夢(明大)

▽マススタート 佐々木

▽団体追い抜き 山田、佐々木、蟻戸

 ◆女子

▽500㍍ 吉田雪乃(寿広)、山田梨央(直富商事)、稲川くるみ(光文堂インターナショナル)

▽1000㍍ 高木美帆(TOKIOインカラミ)、吉田、山田

▽1500㍍ 高木、佐藤綾乃(ANA)、堀川桃香(富士急)

▽3000㍍ 堀川

▽マススタート 堀川、野明花菜(立大)

▽団体追い抜き 高木、佐藤、野明、堀川

 ◆加藤 条治(かとう・じょうじ)1985年2月6日、山形市生まれ。40歳。男子500メートルで2005年世界距離別選手権優勝。

同年11月のW杯で34秒30の世界記録(当時)樹立。06、10、14、18年五輪代表。10年バンクーバー五輪銅メダル。22年3月に現役引退。

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