落語家の初代林家三平さんの妻で、エッセイストの海老名香葉子(えびな・かよこ、本名同じ)さんが24日、老衰のため死去した。92歳だった。

29日に近親者のみでの葬儀を終え、長男で喪主の林家正蔵(63)が公式サイトで発表した。落語家の妻といえば、内助の功で夫を支えるのが大多数だが、海老名さんには、おかみさんとして一門を切り盛りする経営者としての天才的な才覚もあった。

 初代・三平さんは人気絶頂の54歳で死去。大きな支柱を失った三平一門は演芸界で孤独を極め、一門消滅の危機さえあった。その苦境の中で、総領弟子の林家こん平さんと協力し合いながら数十人の弟子や見習いを一人前に育て上げた。

 大所帯の根岸の自宅に弟子を住まわせながら卓越したリーダーシップを発揮。「お金の蓄えより情けの蓄え」という志を胸に、一門の落語家や色物芸人たちをまとめ上げ、名跡の正蔵、2代目三平を始めとする一門の噺家(はなしか)たちの昇進や襲名などにも大きな影響を与えた。

 本人は戦禍をくぐり抜け、学校に行く暇もなかった自分のことを「無学者」と謙遜した。しかし養父の金馬や、爆笑王と呼ばれた夫の元で培った演芸界への見識、決断の速さ、大胆さ、交渉力は群を抜いていた。筆まめで、季節のあいさつやお礼状の達筆さは業界でも有名。その人柄を慕う声も多かった。

 1995年には自宅に三平さんの遺品などを展示する資料館「ねぎし三平堂」をオープン。

コロナ禍で休館したが昨年4月に再開。「笑わせることだけにまっしぐらの生涯を送った人。精いっぱいその精神を受け継いで、笑いを絶やさず三平の気持ちを永遠(とわ)に伝えていきたい」と、卒寿を過ぎてもなお、その思いを貫き続けていた。

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