サッカーの北中米W杯は6月11日に開幕する。日本代表のFW後藤啓介(20)=ベルギー1部シントトロイデン=が、幼少期からの夢である“W杯優勝”への思いを明かした。

昨年11月に初代表に選出された191センチの大型FWは、W杯制覇を明確に描いてきた新世代だ。日本代表が16強の先の壁を破り、頂点にたどり着くためには、爆発的な成長を遂げる“旬”な選手の登場が必須。その筆頭候補が胸の内を明かした。(取材・構成=金川 誉)

 前線にそびえ立つ191センチの存在感は、これまでの日本代表では見られなかった光景だけに、ひときわ目を引く。代表に初招集された昨年11月の親善試合ガーナ戦(14日・2〇0)、同ボリビア戦(18日・3〇0)では、ともに途中出場。得点は奪えなかったが、代表初招集で2試合ともに起用された事実が、期待度の大きさを物語っていた。

 「ずっと目指してきた場所ですし、代表に入るつもりでずっとサッカーをしてきた。やっと入れた、という部分もあった。実際にプレーしてみて、意外と差はないな、と思った。やっぱり(FW陣では)上田綺世君は誰が見ても主軸ですけど、自分も追いつけないことはないな、と思った。自分も海外でやっていますし」

 18歳でベルギーの名門・アンデルレヒトへ渡り、今季はシントトロイデンへ期限付き移籍。リーグ17試合6得点(昨年12月24日時点)と結果を残している。

20歳の躍動は、森保一監督の目に留まり、11月の日本代表活動に招集された。合宿では「日本をもうひとつ先に連れていける存在になれるよう頑張りたい」という言葉で、思いの強さを表現した。

 「日本人はどのポジションを見ても、高さは以前までウィークポイントだった。その中で自分は体格に恵まれて高さもあるし、スピードや技術もあると思う。他の選手に補えない部分を持っていることは一番の武器。課題とするフィジカルの部分がもっと成長すれば、さらに強い日本代表の力になれるかなと思う」

 ポジションへのこだわりは示さない後藤だが、人一倍の執着心を見せるのが、チームの勝利だ。FWの中には、自身がゴールを決めなければ試合に勝ってもうれしくない、と公言するタイプもいる。後藤は「まったく違う」と語る。

 「味方がゴールを決めたら、自分のゴールと同じぐらいうれしい。そこは生粋のストライカーではないのかなと思う。まずチームが勝つことが一番うれしい。別に自分はゴールを決められなくても、っていう感じです」

 子供の頃から、日本の「W杯優勝」という壮大な夢を抱きながらサッカーを続けてきた。

初めてW杯を見たのは、2010年の南アフリカ大会。5歳で見たその大会が夢のスタートだった。

 「見たW杯は、全試合覚えている。南アフリカの本田圭佑さんやヤットさん(遠藤保仁)のFKも。あれを見て、保育園で練習した。W杯で優勝したい、と思い始めたのは、その時だと思う。その後、小学生の頃に決めた自分の人生計画があって、21歳でW杯出場、25歳でベスト4、29歳で優勝。でも、今の代表は全員の目標が優勝。自分だけ出場っていう甘い考えだと置いていかれる。それでは選ばれないと思う。今の日本はW杯優勝できる力があると思うし、それに貢献したい」

 W杯開幕直前の6月3日に21歳を迎える。人生計画に描いた通り、W杯出場が見えてきた、ただ、メンバー入りをかけた本当の勝負は26年の幕開けから、数か月が勝負だと十分に理解している。

 「まだ全然、手に届くところにはいない思う。しっかり競争に勝てるように、シントトロイデンでの活躍が重要。クラブ、ファン含め(期限付き移籍で)受け入れてもらっている立場なので、恩返ししたい。それがW杯への道を開くことにもつながる。チームで優勝目指して、かつW杯でも優勝を目指して頑張りたい」

ベンチに置いておきたい「高さ」

 現状のポジション争いでは、エースFW上田綺世以外は、横一線に近いとみる。オランダリーグで得点ランキングのトップを走る上田は、けがさえなければメンバー入り、さらに重要な試合での先発も当確だろう。他のFW陣は、試合や状況に応じて起用法が変わるはずだ。

 目標とする優勝を果たすためには決勝まで全8試合。上田がすべて先発することは考えにくい。相手のウィークポイントによって、サイドからのクロスに強い小川、豊富な運動量で中盤にも関わるプレーが得意な町野などと使い分ける手もある。22年カタールW杯のように、スピードを生かして攻守で相手にプレッシャーをかけ、決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦でもゴールを決めた前田という選択肢もある。まだ代表での先発経験のない後藤が、逆転でW杯での先発をつかみ取るためには、相当なアピールが必要だ。

ただ、FW陣最長身となる191センチの高さは唯一無二の武器。攻守のパワープレー対策も含め、ベンチに置いておきたい存在と言える。

 町野(シャドー)や前田(ウィングバック、シャドー)、後藤(シャドー)も複数ポジションで起用されており、今回挙げた5人全員が26人のメンバー入りを果たす可能性はある。またFWの“旬”は、ゴール数という目に見える結果に表れる。この5人以外にも残り半年でゴールを量産し、大きく序列を変える選手がいたとしても不思議はない。(日本代表担当・金川 誉)

取材後記 5歳からW杯優勝という夢を描いていた、という話を聞き、まさに日本代表の進化によって生まれた“新世代”だと感じた。2010年南アフリカW杯、本田圭佑らが活躍する姿に憧れ、自然とW杯の頂点を意識してきた世代が、とうとう日本代表にも食い込んできたと言える。

 ベスト16の先の壁を破ったことがない日本代表が、優勝を目指すということは、やはり壮大な目標だ。森保ジャパンの中核を担う選手たちは、その難しさを十分に理解した上で、高い目標を掲げて自分たちを奮い立たせているように感じる。一方で後藤は「W杯で優勝できると思っていますよ」とこともなげに言う。子供のころから当然のように世界の頂点を目指してきた20歳は、W杯で日本がサプライズを起こすためには必要なピースだと感じる。ただ、きっと彼は言うに違いない。

「サプライズじゃないですよ」と。(誉)

 ◆後藤 啓介(ごとう・けいすけ)2005年6月3日、静岡・浜松市生まれ。20歳。カワイ体育教室SC、磐田U―15、同U―18を経て、高2の冬にトップ昇格。23年11月にベルギー1部アンデルレヒトに期限付き移籍し、24年12月に完全移籍。今季は同1部シントトロイデンに期限付きで加入。191センチ、78キロ。

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