豪快な追い込みに何度も声を上げた。12月7日のチャンピオンズC(4着)を最後に現役を引退したメイショウハリオ(牡8歳、栗東・岡田稲男厩舎、父パイロ)は、思い出に残る一頭だ。

 競馬の魅力を教えてくれた競走馬でもあった。今年4月に入社し、9月から競馬を担当。大学時代から競馬好きで、関東の競馬場へよく足を運んだ。そしてメイショウハリオの走りも、何度も現地で観戦した。

 特に胸を打たれたレースがある。フジビュースタンドの3階で、手に汗握った23年フェブラリーSだ。今にも雨が降りそうな薄暗い曇り空だった。ゲートが開くと、赤帽の青と桃色の勝負服が出遅れた。その直後に前へ大きくつまずく。浜中俊騎手の体がフワッと浮き、思わず「危ないっ!」と声を出してしまった。

 無事に立て直して追走するが、すでに先頭とは17馬身差ほど。万事休すか…。

一体どう動くのか。気づけばずっと目で追っていた。

 16頭中最後方で直線を迎えると、大外へ。ジワジワとしぶとく脚を伸ばし、一頭、また一頭と内の各馬を抜いていく。突き抜ける勢いではないが、人馬一体で必死に前をとらえにいく姿に思わず感動。気づけばその姿を必死に追いかけていた。結果はレモンポップから4馬身差の3着だったが、私の心に「メイショウハリオ」が深く刻まれたレースとなった。

 同年には、このコンビでかしわ記念を制し、帝王賞では連覇を達成した。いずれも後方から上がり最速での差し切りV。砂の王者誕生か!と心躍ったものだ。

 だが、以降はライバルの台頭もありあと一歩、勝ち星が遠い日々が続いた。それでも8歳で迎えた今年4月の川崎記念でロングスパートから、底力を見せつけ、1年10か月ぶりに勝利した。

 ラストランこそ落馬負傷でコンビは組めなかったが、武豊騎手が浜中騎手の思いも背負い、後方から上がり最速の脚で4着。最後までらしさを発揮してくれた。キャリア通算は32戦で10勝(ダートG1級4勝)。場所を問わず息の長い活躍を見せ、最後まで私に感動を与えてくれた。

 今後は北海道浦河町のイーストスタッドで種牡馬になる。父パイロの代表産駒として、子供たちに非凡な能力が継承されるだろう。どんなタイプが出るのか、本当に産駒のデビューが楽しみだ。そして19戦連続で騎乗した主戦・浜中騎手との“再コンビ”結成の日を、ひそかに期待している。(松ケ下 純平)

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