大みそかの今夜、第76回NHK紅白歌合戦が行われる。芸能記者1年目の私は、28~30日まで行われたリハーサルを取材した。

 取材初日から、紅白の雰囲気に気持ちが高揚した。会場のNHKホールには、イケイケな雰囲気のバックダンサーが常に出入りし、報道陣の数も規格外。膨大な人数が本番のために準備し、出演者が万感の思いで喜びを口にするのを見て、元高校球児の私は「ここはアーティストにとっての甲子園なんだ」と感じさせられた。

 リハーサル2日目(29日)には、出場38回を誇るレジェンド・郷ひろみの会見に参加。2002年生まれの私は、その名を轟かせた「新御三家」時代など知る由もないが、報道陣への立ち居振る舞いや華やかな笑顔を振りまく姿は、弱冠23歳の目から見ても“スター”そのものだった。紅白からの勇退を発表する瞬間、会場の全員が目を向け、発言に耳を澄ませる雰囲気は、野球の大会前のメンバー発表のような緊張感を思い出した。「若い方たちが紅白に挑戦し続けてほしい」。後輩への熱いエールは、ベンチに入れなかった部員がメンバーに思いを託す光景と重なり、一人で胸が熱くなった。

 今回の紅白のテーマは「つなぐ、つながる、大みそか。」だ。長年、”聖地“を牽引してきたレジェンドは、最後のステージでどんな姿を見せてくれるのか。そして、大みそかの夜に誰が思いをつなぐのか。エキゾチックな姿を目に焼き付けたい。

(高澤 孝介)

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