◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 意外な言葉にハッとさせられた。渡辺美里へのインタビュー中に、昭和から歌い継いできた意義を聞いた時だった。

「今年(2025年)は昭和100年。私はデビューから40年。そして、阪神・淡路大震災から30年」。私の地元で起きた災害の話が始まった。

 1995年1月17日。寒い朝だった。4日後に開催されるはずだった渡辺の大阪城ホール公演は急きょ中止になった。「その頃はインターネットがないし、中止をお知らせできなかったの」。2月12日には同所で振り替え公演。「みんな大変な中を歩いて会場まで来てくれた。ものすごく重く深く刻まれている出来事の一つです」と述懐した。

 神戸市の小学5年生だった私は自宅が全壊し、避難した体育館で凍えるような夜を過ごしていた。

「これからどうなってしまうんやろ…」と放心状態だったが、直接被災していない渡辺もまた苦しんでいたのだ。

 渡辺が40周年ツアーで披露した「点と線」という曲がある。「今は昭和の未来(フューチャー)」の歌詞で始まり、「いつかタイムマシンで30年前 未来に悩む自分 激励するのよ」と朗らかに歌う。渡辺はこの曲を例に「節目があるから何かが変わるわけじゃないけど、そこに思いを寄せるのは大切」と言った。

 避難所で明日を想像できなかった私も、経験を糧にして大人になった。大きな節目の年が暮れ、2026年は新たな「1年目」となる。苦しみも楽しみもひっくるめて「点」をつなぎ、細くとも長い「線」を描きたい。(芸能担当・堀北 禎仁)

 ◆堀北 禎仁(ほりきた・よしきみ)2008年入社。昨年6月から芸能担当。

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