俳優・仲野太賀(32)の活躍がめざましい。主役、脇役問わず連ドラ、映画と引っ張りだこ。

4日からは、主演するNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」(日曜・後8時)がスタートする。6度目の大河出演にして念願の大役に「本当にこんなことがあるんだ」と顔をほころばせるが、そこには父の俳優・中野英雄(61)が込めた、ある思いも存在した。(浦本 将樹)

 ずっと夢見ていた大河の主役に、喜びをかみ締め続けている。「これまで(『風林火山』『天地人』『江』など5本に)出演してきて、作品の真ん中に立っている先輩を見て『格好いいなあ』と思っていた。でも、この仕事をしていて主役がどれだけ遠いものか痛感するうちに、気付いたら夢も頭の片隅に追いやっていた」。いざオファーを受けた時の思いは「本当にこんなことがあるんだ」。当時を思い出し、また目を輝かせた。

 このほど行ったインタビューは、他媒体も同じ日に行うため、半日かけて10社以上から質問を繰り返される。記者も消耗を心配したが「全く疲れないですよ。こんな経験、一生に一度ですから」と笑い飛ばした。

 演じるのは戦国大名・豊臣秀吉(池松壮亮)を兄にもつ豊臣秀長(登場時は小一郎)。尾張(現在の愛知県)の農家に生まれた兄弟が、夢と希望を胸に天下統一へ突っ走る下克上ストーリーだ。

三英傑(他に織田信長、徳川家康)の一人でもある兄に比べると、知名度は高くない秀長。秀吉の補佐役として調整能力に優れていたとされる。

 仲野も「秀吉の弟ってどんな人?って全くピンと来ていなかった」と告白。すぐに調べ、文献も何冊か読んだ上で「若い頃なんか特に資料がなく、史実が少ない。その代わり、演じる上では自由度が高いかな」と役づくりの難しさをプラスに考える。「イメージで自分の中で制限をかけると、人間が小さくなる気がする」と危惧。自身との共通点については「次男ということくらい」と決めつけすぎていない。

 それでも勉強して入り込むうちに「秀吉のような天下人は100人に1人。秀長は99人側の人。だからこそ秀吉に見えなかったものが、見えていたかもしれない」と思いをはせる。秀長ゆかりの場所を巡っていて、奈良県の壷阪(つぼさか)寺にある秀長の木像を見て感じたこともある。「(像が)作られたのは、豊臣の時代が終わった後だったらしい。

亡くなった後も『この人のことを残したい』と思った人がいた。あらゆる人に目線を合わせていたんだろうな…」

 1年にわたり放送される大河ドラマ。撮影は1年半にわたる予定だ。現在は3分の1が終了。「最初は肩をぶん回していたけど、途中で壊れた。今は休憩しながらゆっくりやっている。短距離走ではなくマラソンなんだなと気付いた。土日が休み、月曜にリハーサルなので、コンディションを整えながらリズムの大切さを実感しています」とマイペースを貫いている。

 2006年にデビュー。映画、ドラマともに主演も脇役も多く、24年の朝ドラ「虎に翼」でヒロイン(伊藤沙莉)の夫役を務めるなど、オファーが絶えない。24年3月の制作発表会見では「太賀が大河とシャレになってしまって申し訳ない」と苦笑したが、この話には前段がある。

 父の中野が約30年前、テレビ番組で息子を「太賀」と名付けた理由について「大河ドラマで主役を張れるように。

僕が無理なんで」と語ったことがある。仲野は「半分ジョークで言ったんだと思いますよ」と笑いながらも、大河主演を直接報告した時の様子を明かす。中野は「おめでとう」と祝福したが、印象に残るのはその時の顔だ。「何かをもらったり特別なことは言われなかったけど、今まで見たことないような父の表情が見えた。喜びと驚きと、俳優としても思うところがあったのかな」と想像する。

 バランス感覚に優れた秀長のイメージは、自身にも近い。インタビュー後の写真撮影で、干支(えと)にちなんで「馬のようなポーズを」とお願いすると「それは難しいなあ…」と戸惑いながらも、こちらの要求に応じていろいろとポージング。「知らないうちに馬にしようとしてません?」とフォローして記者やスタッフを笑わせるなど場を和ませていた。

 ◆仲野 太賀(なかの・たいが)本名・中野太賀(読み同じ)。1993年2月7日、東京都出身。32歳。2006年ドラマ「新宿の母物語」で俳優デビュー。

07年「風林火山」でNHK大河ドラマ初出演。その後「天地人」(09年)、「江」(11年)、「八重の桜」(13年)、「いだてん」(19年)にも出演。19年に芸名を太賀から仲野太賀に改名。趣味はカメラ。168センチ。

 仲野とタッグを組むのは兄・藤吉郎(のちの豊臣秀吉)役の池松壮亮(35)だ。今作で大河出演は3度目。仲野も「秀吉のように明るくカリスマ性があって現場を和やかにしてくれる」と実の兄のように甘えている。

 2人は10代の頃に知り合った仲で、映画「本心」(24年)など共演作も。現場でも「現代に戦国時代のドラマをやるのは、どういう表現がベストなのか」など常に話し合う。昨年12月の記者会見でも写真撮影で握手して肩を組み「ほっぺにキスまでならいいですよ」(池松)とおどけるなど仲の良さを見せつけている。

 もう一人、兄のように慕うのは織田信長役の小栗旬(43)。

「芸能界に入る前から俳優として超トップランナー」と尊敬。「撮影が大変でも一切手を抜かない。自分に厳しいストイックさを感じる。信長にぴったり」と賛辞を惜しまない。ただ信長は秀長にとっては主君。「言葉にするのがはばかられるくらい怖い。撮影ではひどい目に遭っています」と口をつぐむ。

 小栗は2022年に「鎌倉殿の13人」で主演するなど、大河の座長としての先輩でもある。一緒に食事した際に「最終的にはスタッフが守ってくれるから、好きにやった方がいい」と助言をもらったという。

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