歌舞伎俳優の市川團十郎が3日、東京・新橋演舞場で初日を迎えた「初春大歌舞伎」(27日千秋楽)の昼の部「熊谷陣屋」で熊谷次郎直実を演じた。

 武将としての生き様、戦乱ゆえの悲劇が描かれる時代物の名作。

源平争乱の時代。自らの陣屋に戻った源氏の武将・熊谷次郎直実(團十郎)は、妻の相模(中村雀右衛門)に息子小次郎の活躍と、平家の公達敦盛を討ったことを明かすところへ、恩義ある敦盛の母藤の方(中村扇雀)が姿を見せる。やがて義経(中村虎之介)による首実検が行われる。

 團十郎は2代目中村吉右衛門さん(2021年死去、享年77)の教えを胸に刻み、10年ぶりに熊谷を演じる。「熊谷の型は9代目團十郎が作り、初代吉右衛門、初代白鸚から播磨屋のおじさん(吉右衛門さん)に受け継がれた。だから初役の時(15年)、僕に『返すよ』とおっしゃったおじさんの思いを重きを持って受け止めました。改めて稽古をして臨みたい」と気を引き締めている。

 團十郎が演じる熊谷の一挙手一投足が観客の視線を集め、場内は緊張感に包まれる。武将としての猛々(たけだけ)しさから親としての悲しみと無念さがにじみ、人生のはかなさが胸を打つ時代物の一幕に温かな拍手が送られた。

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