◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 広島・新井貴浩監督(48)は、監督業の苦悩の一つに「汗をかけない」ことを挙げる。ダイヤモンドの中で数々の喜怒哀楽を味わってきた指揮官。

「自分が腹をくくって送り出しているから、使っている側の責任」という思いは当然あるが、「プレーヤーだったら『明日は打つぞ』と思える」と、悔しさ、もどかしさで眠れない日々は現役時代と比にならないという。

 就任3年目で最低の5位に終わった昨季。特に終盤は経験の浅い若手を使った影響もあり、球団15年ぶりの借金20まで膨らんだ。育成を重視する方針を一貫する球団において“特効薬”は望めないからこそ、同じく「汗をかけない」ファンの戸惑い、不満も募った。

 昨季、前年までのプロ7年間で計39安打だった中村奨が97安打を放って飛躍の兆しを見せた。新井監督が言う「我慢強く、辛抱強く」という思いが一つ実を結んだ。一方で、その他はどうか。今、同じだけ出場機会を与えれば、秋山、菊池らベテランを圧倒できる結果を残せる若手は何人いるだろうか。それでも、新井監督は若手育成にこだわる。「若手が力をつけることによって、チームの底力を押し上げてくれる」。3年間、近い距離でその姿に触れ、自身が退いた後まで考えながらチームづくりに取り組んでいることを強く感じた。

 今月、広島を離れることになった。

芸能界とプロ野球界をほぼ半分ずつ取材してきた記者生活は20年を過ぎ、今年から社内で原稿をチェックするデスクとなる。「汗をかけない」日々で原稿と格闘しながら、苦悩の先にある変革を見届けていきたい。(広島担当・畑中 祐司)

 

 ◆畑中 祐司(はたなか・ゆうじ)2004年入社。SMAP解散から始まった2度目の芸能取材の後、21年途中から25年まで広島担当。

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