2025年の大みそかは前年に続き、紅白歌合戦の取材だった。当日、NHKホール内に入ることはできないため、取材はホールから出てくる通路で待機。

隣は駐車場で外気にも触れる。外で張り込み取材をするのと同じような状況だ。

 歌手自身のステージだけでなくコラボも盛りだくさんだった紅白。往来するアーティストも多い。雰囲気や会話から緊張感、達成感などをひしひしと感じることはできるが、なかなか立ち止まってもらえない。少し歯がゆい思いをしている時に「サカナクション」のボーカル・山口一郎(45)が自ら歩み寄ってくれた。

 12年ぶりの出場だが、ただの12年ではない。その間には自身のうつ病で2年間音楽活動を休止した期間もあり「紅白のステージに立てたというのは自分的にもすごいドラマチック。音楽の神様に見捨てられなかったというか真面目にやっていればちゃんと見てくれる人がいるし、聞いてくれる人がいるんだなという自信になった」と感慨に浸っていた。

 「病気になる前には戻れないけど…」と悔しさをにじませるような言葉も飛び出したが、山口の視線はまっすぐ前を見つめていた。「病気を抱えながらこれからも音楽をやっていく。同じ病気で苦しんでいる人たちにも、自分たちのやり方でエールを送れたらなと思います」

 紅白で披露した「怪獣」は病と向き合いながら作詞した曲だ。

「新しいスタイルで音楽を作っていけたらいいかな」と前向きな言葉には、取材としてだけでなく、私自身も勇気をもらえた気がした。

 大みそかの夜。防寒対策はしていても、やはり寒いと思う時はある。そんな時、心を温めてくれるのはこういう瞬間だ。(記者コラム・中西 珠友)

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