◆報知プレミアムボクシング▽ニューヒーロー第8回 日本バンタム級6位・坂井優太

 2024年6月のデビューから6戦全KO勝ちのホープ、坂井優太(20)=大橋=の勝負の年がスターした。2022年に世界ユースで日本人3人目の金メダリストとなり、アマ7冠を手にプロ入り。

高校時代からその名は全国に知れ渡り、プロのリングでも鋭いカウンターでKOを量産し、付いたニックネームは「モンスター2世」。尊敬するジムの先輩で世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(32)の後継者と期待される存在だ。26年は「一気に飛躍する年」と誓いを立て、父子二人三脚で築き上げたボクシングでタイトル獲得を目指す。

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 スーパールーキーとしてデビューから大きな注目を集める坂井が、26年を予想した。

 「一気に飛躍するか、負けるかのどちらか。そうなる年だと思うし、飛躍できるように頑張る」

 いきなり「負け」という言葉が出たのには驚かされたが、それだけ危機感、覚悟を持って挑む一年だということを強調したのだ。過去6戦より、対戦する相手の実力がワンランク上がることを想定している。日本ランクは6位となり、地域タイトル(日本、東洋太平洋、WBOアジアパシフィック)への挑戦を視界に捉えているからこその決意表明でもある。

 昨年8月の5戦目こそ5回KOだったが、それ以外はすべて2回以内で試合を終わらせ、申し分のない結果を残している。「数字的にはパーフェクトですが、内容的にはまだまだ。練習でやってきたことがリングで出せていない。自分が理想とするのは、打たせずに打つこと。

それでいて判定ではなく、倒しきる。カウンターで倒すスタイルをもっとファンに見せたい」と求めるものが高いだけに、自己採点は厳しい。

 バンタム級としては大柄な173センチ。サウスポースタイルでスタンスを広くし、低い姿勢で構える。背が高い分、自分より小柄な選手が下から懐に入ってくるのを防ぐために、目線を相手と同じにするか、それ以下にする。向かい合った相手に長いリーチをいかしたジャブを出し、ストレートを打ち込む。そして最大の持ち味は「フットワーク」と即答する。ラウンド中は足を止めずに動き続ける。足のスピードで相手に的を絞らせないスタイルは、大きな武器となっている。

 ボクシングにのめり込むきっかけは、小学校1年の時に父・伸克さん(53)から渡された漫画「はじめの一歩」だった。いじめられっ子だった幕之内一歩がボクシングとの出会いをきっかけに、強く、たくましく成長して日本チャンピオンへと上り詰めるストーリー。主人公の少年時代が自身の境遇にダブった。

伸克さんからクリスマスプレゼントに子供用のグローブとミットをもらうと、その足で公園に直行して2人で汗を流した。それ以降、親子のコンビは続いている。ボクシング経験のない伸克さんは息子のトレーナーになることを決めると、ゼロから勉強を始め、今に至っている。プロ入りの時は、坂井がジムの大橋秀行会長に直談判した。

 「1人だったら大橋ジムには入っていなかった。自分から『プロになっても父の指導を受けたい』と(大橋)会長にお願いして了承していただいた」

 伸克さんは週の半分を横浜に来て息子を指導し、残りの半分は兵庫に戻り仕事というサイクルを繰り返している。練習メニューはすべて伸克さんが作り、「インターバル」でスタミナ、「フィジカル」で筋力、そして「ボクシング」という三つを軸としたメニューで強化に励んでいる。

 大橋ジムには坂井同様にトップアマで活躍した選手たちが多く在籍している。プロという立場上、仲間でありライバルでもある。「やっぱり同時期にジムに入った選手は意識します。(田中)空くんが先にチャンピオンになって不安になったこともあった」。高校卒業と同時に入門した坂井に対し、田中は大学出身という違いはあるが、昨年6月のプロ4戦目で東洋太平洋ウエルター級王座を獲得した同期には刺激を受けた。

その田中の同10月の初防衛戦では「強い選手を相手に進化した姿を見せていた。スパーでは見たことのない動きを見せていたし、プロとして試合で自分を見せていくということの重要性に気付かされた」と、少しの対抗心と多くの尊敬を抱いたことを明かした。

 高校3年の時、大橋会長から入門を勧められ、初めてジムに足を運ぶと、そこで用意されていたのはモンスター・井上尚弥とのマススパーリング(軽く触れる程度のスパー)だった。「こんなスーパースターと自分は何をしてるんだろうと思いながらリングに立っていた。つい最近までは公園で練習していたのに…。もう、どうしていいか分からなくなった」と舞い上がった。それが今ではしっかりと「モンスター2世」を襲名している。

 目標は言わずもがな、世界を取ること。その前にまずは、地域タイトルに照準を定める。「日に日に(タイトルへの)気持ちが強くなっている。自信もあるし、早くその場に立ちたい」と気持ちを高ぶらせる。次戦は3月に世界ランカーとの対戦を予定している。

(近藤 英一)

 ◆坂井 優太(さかい・ゆうた) 2005年5月27日、兵庫県尼崎市生まれ。小学校1年からボクシングを始め、兵庫県立西宮香風高在学中にAIBA世界ユース選手権で優勝するなど、七つのタイトルを獲得。24年6月にB級(6回戦)でプロデビュー。昨年6月に日本ユースバンタム級王座を獲得するが、防衛戦を行わず返上。プロ戦績は6戦全勝(全KO)。身長173センチの左ボクサーファイター。

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