女優の篠原涼子(52)が新たな一面を見せている。主演する日本テレビ系連続ドラマ「パンチドランク・ウーマン―脱獄まであと××日―」(日曜・後10時半)で、初となる女性刑務官役を熱演。

地上波ドラマでは初めて主題歌も担当した。デビュー以来マルチな活動を続けてきたが、その根底には地元・群馬から芸能界を目指した頃の「初心を忘れない」という思いがあった。(堀北 禎仁)

 華奢(きゃしゃ)な体も、その声も、柔らかい輝きを放っていた。キャリアを積んだ大女優でありながら、篠原には不思議なほどに親しみやすさがある。

 女優、歌手に加えて、バラエティー番組でも活躍してきた。「たとえ線引きをしても、その線を無視しちゃう方。それが自分だと思ってる」。デビューして35年を超えたが、スタンスを切り替えることはしない。

 大切に持ち続けているのは10代の頃の気持ち。「この仕事を始めた時の初心を忘れずに、ピュアな気持ちを大切にして生きていきたい。慣れていくと過去を忘れるけど、新鮮な気持ちって一番大事。お守りのように取っておきたいです」

 デビュー前に地元・群馬から東京に通っていた、15歳の頃の風景は、現在も脳裏に焼き付いている。

 「(東武線の)『りょうもう号』という電車でレッスンに通っていたけど、あの電車の中が自分にとってのドラマですね」

 男手一つで育ててくれた父・勝雄さん(2010年死去)が駅で見送り、何度も手を振り合う。それが「いつものルーチン」だった。「電車に乗って、ガタンゴトンとなりながら丘を通る景色を見て。頑張って東京に行ってレッスンを受けていると、新しい子が入ってきたり、先生が替わったりする。ちょっと落ち込んだり、励まされたり…いろんな物語を持って群馬に帰る。あの時間がすごく大切な思い出です」

 篠原が、演技の仕事を本格化させたのは20代後半から。勢いとは裏腹に「プライベートと仕事のバランスが取れずにつまずいた」時期でもあった。

 「できるかどうか分からない挑戦がいっぱいありすぎて、そこに追いつけない自分がいた。作品は進んでいくけど、乗っかれてない感じがあった。気が小さい性格だったんで『どうすればいいんだ』みたいな感じになったこともありました。ただ、寝ちゃえば忘れちゃう性格なので、割と一瞬でしたけどね」

 30代に入り、才能は一気に開花。「アンフェア」(06年)や「ハケンの品格」(07年)、「ラスト・シンデレラ」(13年)など、いくつものドラマの当たり役と出会った。

「(どれも)自分の振り絞ったエネルギーを入れて、ちょっとでも足しになったのかなと思った作品たち。良い作品ってスタッフのみんなが手応えを感じている。なぜか『これ、いけるかも』という、何かが一つになっていく不思議な現象がありましたね」

 今作にも似たような雰囲気がある。初めての女性刑務官役は「すごく新鮮」だという。SixTONES・ジェシー(29)演じる殺人犯との脱獄劇。サスペンスでありながら禁断の恋愛を描くストーリーに「タイトルのように、パンチがあって衝撃だった。女性としても魅力を感じる、興味深い作品。すごくやりがいがある」と語った。

 連ドラ初主演作の「光とともに…~自閉症児を抱えて~」(04年)以来、日本テレビのドラマにはキャリアの節目で縁がある。「現場が熱いので、がむしゃらにやるとちょうどいい。終わった後、必ず涙が出るんです。あと、生田スタジオ(の空間)が結構好き」

 歌手としては1994年に「恋(いと)しさと せつなさと 心強さと」が大ヒット。

「あれは自分の力ではなく、小室哲哉さんという大きな存在のおかげ」と感謝が尽きない。

 その後、小室プロデュースを離れると、ヒットに恵まれず。酸いも甘いも経験した。「認められないし、歌を出しても売れない。勘違いしちゃいけないんだな、と目を覚まさせてもらえた時期でした。山あり谷ありの、谷の場所が来てくれたおかげで(大切なことに)気づけました」

 22年にはその小室と共演し、28年ぶりにNHK紅白歌合戦に出場。話題を呼んだ。「普通の人は諦めるんでしょうけど、歌が好きなので」と変わらず歌手活動に情熱を燃やしている。

 ドラマ主題歌「Canaria(カナリア)」は、歌手・鈴木雅之(69)との初デュエットソングだ。所属レーベルが同じだった約30年前、「いつか一緒にデュエットしよう」と声をかけた鈴木が約束を覚えていた。まさかの“再オファー”に「びっくりしちゃいます。どうして私は聞き逃していたんだろう…。

緊張して、そういう話も入らないぐらいの時だったと思う。お話を頂いた時はすごくうれしかった」と喜んだ。

 今年の抱負は「自分自身が楽しいと思ったら行動に起こす」こと。その対象を見つけるためにも、この数か月間は、目の前のドラマに集中するつもりだ。

 「今ね、一生懸命仕事してるの。この仕事をしっかりやってから、おいしいご飯を食べて、笑いながら乾杯したいですね」

 飾り気のない言葉の数々、真っすぐな視線からは、ほのかに10代のあの頃の香りがした。

 ◆篠原 涼子(しのはら・りょうこ)1973年8月13日、群馬・桐生市生まれ。52歳。90年に女性グループ「東京パフォーマンスドール」でデビュー。91年フジ系「ダウンタウンのごっつええ感じ」のレギュラー。94年「恋しさと せつなさと 心強さと」でNHK紅白歌合戦初出場。2001年「ハムレット」で舞台初出演。

18年の報知映画賞で主演女優賞。05年俳優・市村正親と結婚。2児をもうけたが、21年離婚。162センチ。

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