サッカーJ1で昨季3位と躍進した京都は、24年10月からイングランド1部ボーンマスとパートナーシップを締結している。トップチームから下部組織まで、選手、スタッフの交流や、スカウト情報の共有、育成活動のサポートなど手広く連携をとる。

25年シーズン終了後もトップ、ユースの選手がボーンマスU―21の練習に参加するなど、その関わりはより強固になっている。スポーツ報知では、2クラブの関わりについて随時特集。初回は締結の狙いと今後のビジョンについて、安藤淳・強化部長(41)、李将山・強化担当兼スカウト(39)に聞いた。(取材・構成=後藤 亮太、森口 登生)

 安藤強化部長は、2022年8月にクラブのブランドアンバサダーから、強化部長代理に就任した。チームは2010年以来となるJ1を戦っている途中。クラブとしても勢いがある中、取り掛かったのが海外クラブとの関係構築だった。

 安藤(以下、安)「強化のトップに立った時に、何かしていかないといけないなと感じていた。(自分の)現役時代から他クラブは海外に提携していて、サンガは海外に対する(提携などの密接な)関係がないというところが現状だった。若い選手と話す中でもみんなキャリアの最終地点が欧州に向いているところで、クラブとして国内だけじゃない関係性を築かないといけないな、と。李にも相談しながら、探っていた中でボーンマスさんと関係ができた」

 ボーンマスは、イングランド3部で戦っていた2008年に破産申請をして同国4部に降格。それでもオーナーの体制、監督人事などクラブ一体で立て直し、2015―16年シーズンで初の1部昇格。24―25年シーズンでは過去最高の9位を記録した。

昇降格を味わってきた京都との親和性も、一つの決め手だった。

 李将山スカウト(以下、李)「プレースタイルの親和性やクラブの歴史が、ミーティングする上で非常に似ていると感じた。ボーンマスも降格を経験して、苦しい立ち位置から今のオーナーが来て、状況が一変した。うちもエレベータークラブってずっと言われてきた中で、チョさん(チョ貴裁監督)が来られて、J1定着が見える立ち位置にやっときた。サッカーもすごく似ていて、やっていることは間違ってないと選手に言ってもらえるということは、狙いとしてもすごく良かった。自分たちが普段やっていることが、プレミアリーグのチームもこだわっている」

 その「プレースタイルの親和性」を示す一つの指標がある。24年シーズン、1試合におけるフィールドプレーヤー(GK以外)1人あたりのハイインテンシティ(20km/h以上)での平均走行距離(インプレー90分換算)は、京都が世界1位。2位がボーンマスだった。

 李「言葉で説明してもなかなかうまく伝わらないけど、数字がある。活用させてもらって、今回の提携の意義、可能性について話して、先方もその認識でいてくれている。共通点を感じてもらっているので、その目線で僕らのチームスタイルを見てくれています。僕らだけじゃなくて、このランキングは町田が7位で神戸が9位。

日本市場に、すごく興味を持っていただいてるのはありますね」

 提携の内容には、スカウト情報の共有もある。具体的には、ボーンマスと同じマルチクラブオーナーシップ【MCO、注1】に属する多くの国のクラブの情報網を共有している。

 李「常日頃からボーンマスのトップチームスカウトの方とやり取りをさせてもらっている。(情報共有の利点としては)プレー面はある程度映像サービスを使えば分かるが、人間性や生い立ち、パーソナリティーのところで精度の高い情報を得られている。オファーするという前向きなことだけではなくて、オファーを考えていたけど、ネガティブな情報を受けてやめたケースもある」

 スカウト面での利点はもちろん、ピッチ上にも好影響は波及している。選手の闘志に、いろんなアプローチで火をつけるチョ貴裁監督。ミーティングでは魚の群れの映像を見せて一体感を高めることや、ラグビーのタックルシーンを見せて献身性を説くこともある。柔軟な指揮官は、世界トップリーグで戦うボーンマスの映像も駆使し、チームのレベル向上につなげているという。

 安「ボーンマスの映像はかなり使っていて。フットボールのスタイルの親和性があるというところと、プレミアリーグのトップトップのチームの選手がこれだけインテンシティを発揮しているというのは伝わり方が違う。すごく説得力がありましたし、チョ監督は実際に(ボーンマスの)イラオラ監督に会っているので、よく活用していた印象はあります」

 ピッチ内外での好影響に加え、今後は新人選手獲得に向けた一つのアピール材料にもなりうる。

 李「大学生のスカウティングだったりをする中で、京都に来た時に、選手が成長していく中で海外クラブへのパスウェイパイプがあるよ、というのを示せればいいなってずっと思っていて。

実際(ボーンマスは)世界のトップトップなので、現実的かというのは課題点ではあるが、実際うちの選手は毎年2人、3人が練習に参加させてもらえている。そこも含めてクラブとしては、リクルーティングのところの狙いが1番まずは大きいのかなと思います」

 ボーンマスとの提携は、好循環を作り出している。クラブとしては、その輪をさらに広げていく構えだ。

 安「クラブとして成長するために今後いろんなものを吸収、勉強していかないといけないと思う。他のJクラブは、複数のクラブと提携している現状があって、サンガはちょっと遅れを取っているという認識で動いている。また違うセカンドリーグのチームとの提携だったりとか、今後そういうふうにいろんなことを取り組んでいかないと、Jリーグの競争には勝っていけない。いろんなことをイメージしながら進めていきたいなという思いはあります」

 李「今後、新人選手の年俸の上限が撤廃される可能性がありますし、リーグも秋春制になって、欧州から直接高校生、大学生を取ることも考えられる中で、僕らは仕掛けをつくりたい。24年からパートナーシップを締結したんですけど、一番の理想は、選手がボーンマス、もしくは(ボーンマスの)MCOのクラブにステップアップすること。今後実績として残せたら、新人選手獲得にすごい大きな力になると思う。中長期的な話にはなるが、今後ボーンマスの首脳陣、チームに実際足を運んでもらって、肌感で日本の市場を分かってもらいたいなと思っている」

 【注1】マルチクラブオーナーシップ(MCO)とは、一つのオーナーあるいは資本が、国籍の異なる複数クラブを保有する運営形態のこと。

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