大相撲初場所11日目(21日、東京・両国国技館)

 東前頭16枚目の朝乃山(31)=高砂=が幕内で11場所ぶりの勝ち越しを決めた。東同6枚目・平戸海(25)=境川=を寄り切り、2017年に急逝した富山商相撲部時代の恩師・浦山英樹さん(享年40)の命日に白星を挙げた。

左膝の大けがを乗り越え、9場所ぶりに再入幕を果たした元大関は、優勝争いでも2敗の新大関・安青錦、平幕・熱海富士、阿炎を1差で追いかける。

 恩師に捧(ささ)ぐ白星だ。朝乃山は平戸海の鋭い当たりを正面から受け止め、左でおっつけた。右をねじ込んで前に出ると左で上手をがっちり。攻めを緩めずに前に出て粘る相手を寄り切った。3連勝に「右をねじ込んで取ることが出来た。場所前に両横綱と稽古して力がある平戸海関に負けないように戦った」と汗をぬぐった。

 11場所ぶりに幕内で勝ち越しを決めた。21年に大関時代のガイドライン違反による6場所出場停止で、幕内だった24年には名古屋場所で左膝前十字靱帯(じんたい)断裂などの大けがを負って、2度三段目転落を経験した。自身を律し、不屈の精神ではい上がっての給金直し。大関復帰を目指しているだけに「まだ場所は終わっていない。切り替えていきたい」と気持ちを引き締めた。

 この日は、富山商高相撲部時代の監督で17年に40歳で亡くなった浦山英樹さんの命日だった。中学3年で左肘を骨折して相撲をやめようとした時、熱心に誘ってくれたのが浦山さん。17年春場所の新十両時、しこ名を「朝乃山英樹」とするほど恩義を感じていた。21年に父・石橋靖さんが亡くなったこともあり本名の「広暉」に改名したが、今も「1・21」は特別だ。

 本場所に持参する巾着には、病床で書かれた手紙が入っている。横綱昇進や富山のスターになることを期待する内容で「遺書ですね。広げたら読めるので」と時折目を通して自らを奮い立たせる。「毎年初場所に命日があって勝ったり負けたりしていた。でもはい上がる姿を見ててほしかった」と思いがにじんだ。

 18日は近大時代の監督で、20年に55歳で亡くなった近大相撲部の伊東勝人監督の命日でもあった。「2人の恩師、そして父親や(お)じいちゃんもみててくれると思う。僕が結果を出せば喜んでくれるはず」。

連日、幕内でトップ級の歓声を浴びる人気力士は「長期間休んだことは無駄ではなかった。勇気や元気を与える相撲を見てほしい」と使命を口にした。

 3敗を守り、首位の安青錦らとは1差。19年夏場所以来の逆転Vへの期待がかかるが、「何もない。一日一番自分の相撲を取るだけ」と無欲を強調。八角理事長(元横綱・北勝海)からは「うまい相撲はあるが、強い相撲を期待したい」と発破をかけられた。主役の座を虎視たんたんと狙っている。(山田 豊)

 ◆朝乃山 広暉(あさのやま・ひろき)本名・石橋広暉。1994年3月1日、富山市生まれ。31歳。小4から相撲を始め富山商から近大に。16年春場所初土俵。

17年春に新十両。同年秋、新入幕。19年夏場所で幕内初優勝し、20年春場所後、大関昇進。21年夏場所中にコロナ禍のガイドライン違反が発覚し、6場所出場停止。23年夏、再入幕。翌年の名古屋で左膝を負傷し、3場所連続全休。昨年春に三段目で復帰し、先場所は再十両。得意は押し、右四つ、寄り。188センチ、170キロ。

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