大相撲初場所11日目(21日、東京・両国国技館)

 西前頭12枚目・阿炎が東同14枚目・獅司との2敗対決を制し、首位タイを守った。立ち合い変化から突き落とし、2022年九州場所以来2度目の優勝へ、なりふり構わず白星をつかんだ。

新大関・安青錦は西前頭3枚目・伯乃富士を下手投げで退け、西前頭4枚目・熱海富士は西同7枚目・藤ノ川を送り出して2敗をキープ。トップの3人を横綱・豊昇龍、関脇・霧島、平幕・獅司、朝乃山、欧勝海が1差で追う。

 長年培ってきた阿炎の勝負師としての嗅覚が発揮された。獅司との2敗同士の対決。立ち合い前、先に両手をついた相手に対し、一度ついた自身の右手を引いた。「獅司関がとても力んでいることがわかった。今場所の獅司関はとても頭を下げていることを思い出したので、立ち合いをとっさに変えた」。一呼吸置いて立つと、左に飛んで変化。対応されて土俵際まで押し込まれたが、さらに左へ回り込み、相手の首根っこをつかむように突き落とした。

 支度部屋では「頭も体もさえている気がする」とうなずいた。この日の白星で通算500勝。負け数を自ら尋ね、377敗であることを知ると「勝ちが多いのはうれしい。

(勝ち数は)あまり気にしていない。今勝てていることが大事なので」と笑顔で話した。

 「負けて覚える相撲かな」。2023年12月に死去した先代師匠の前錣山親方(元関脇・寺尾)が、よく口にした言葉だ。肘の手術の影響もあり、昨年は6場所で1度しか勝ち越せなかった。「先代の慰めだったのではないか。あの言葉に甘えていた」と考えるようになった。今月3日には妻とともに、先代師匠の墓参りへ。西前頭12枚目で迎える初場所を前に「今年は勝ちにこだわる」と誓いを立てた。「きれいな相撲でなくても、自分のできることをやる」。左上手を狙ったり、立ち合いのかちあげなど、今場所は得意の突き、押しだけにこだわらず、貪欲に勝利を目指している。

 2敗を守り、優勝争いの先頭を走る。

4年前の九州場所を制した31歳は「あの時も一番一番を考えていたので、いい経験になっている。(優勝は)目指して悪いものでない」と賜杯へ意欲を燃やす。12日目は大関・琴桜戦。八角理事長(元横綱・北勝海)は「阿炎は何を考えているかわからないから上位には嫌な存在」と語った。乗ったら怖い阿炎のエンジンが、いよいよかかり始めた。(大西 健太)

編集部おすすめ