俳優・毎熊克哉(38)が、女優・大西礼芳(あやか、35)とダブル主演する映画「安楽死特区」(23日公開)で、回復の見込みがない難病を患う主人公を演じている。実在した指名手配犯の逃亡生活を演じて昨年話題になった「『桐島です』」に続く、高橋伴明監督作品での主演。

その境地を語った。(堀北 禎仁)

 安楽死が合法化した近未来の日本を描く衝撃作に、真っ向から対峙(たいじ)した。毎熊は「すごくとっつきにくい題材で、タイトルからして重い」と認める一方で「想像するほどどんよりした映画でもない」と、起伏のある展開に手応えを見せた。

 原作は、在宅医として2500人以上をみとってきた医師で作家の長尾和宏氏による同名小説。毎熊が「自分には語れないほど偉大」と尊敬する高橋監督からのオファーに「受けない理由はない。もう、やるでしょという感じ」と出演を即決した。

 初めて難病の患者役を演じた。シリアスなテーマだけに、集中力が要求される現場。「誠意を持って演じること以外はできないので、感じた気持ちを自分の中に持って役に向かっていった」

 ラッパー役も初体験。最初は心配だったが、芝居を重ねる中で体に定着していった。

 「韻を踏まなきゃいけないとか、そういうことにあまり縛られずにラップという歌唱方法だけを使うと、リズムさえあれば自分の言葉自体を(ラップで)何にだってできてしまう。持っている心臓の鼓動やリズムに言葉が乗ることは、日常でもなくはない。

すんごいブチ切れてるおじさんをたまに見るじゃないですか。あれ、よく聞いてるとちょっとリズム持ってるんですよ。それに近いところがあります」

 劇中の髪の毛は地毛。高橋監督と相談して緑色のメッシュを入れるなどこだわった。「一見、病人に見えない方がいいなと思って。派手な髪型で生き生きした見た目の方がいい」と、試行錯誤の末にたどり着いた。

 社会派作品に位置づけられる本作や「『桐島です』」は、感覚的にはロードムービーに近いという。「やってみないと分からない要素が強かった」と自然体で演じることに徹した。山場となるラストも「勢いのあるシーンになった」と手応えを感じている。

 ダブル主演の大西とは、昨年の映画「初級演技レッスン」でも共演。「すごく繊細な感覚を持っている方。それが思いもよらぬ形でリアクションとして返ってきた時に、新しい何かが生まれてくる」と才能を認めた。

 毎熊は「自分だっていつ安楽死を望むような状態になるかもわからない」と、我が身に置き換えて作品と向き合った。「母親の足が悪くて出かけられない時期があった。母親の性格からしたら、もう死にたいと言い出すんじゃないかなと思った。今は歩けるようになったけど、家族が安楽死を望んだらどうしようかな、とつらくなった」

 2024年公開の自主制作映画「東京ランドマーク」ではプロデュースと配給に関わり、現在も宣伝に奔走する。俳優という職業だからこそ実現できることもある。

 「俳優って結構地味な仕事だなって思うんですよ。だけど映画やテレビでは、はたから見たら『派手な人たち』じゃないですか。それを利用して、より映画を発信していきたい。映画館来てくださいよ、と。(自分が)表に顔が出てる人だから、発信することで人を楽しませることにつながるかも」。謙虚に、ひたむきに。映画への愛を推進力にする。

 ◆毎熊 克哉(まいぐま・かつや)1987年3月28日、広島県生まれ。38歳。専門学校を卒業後に俳優活動を始め、2010年に初出演舞台「TIC―TAC」で主演。16年、専門学校時代の同級生である小路紘史監督の映画「ケンとカズ」で主演を務め、第31回高崎映画祭最優秀新進男優賞などを受賞。180センチ、64キロ。血液型A。

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